2021年6月30日水曜日

ジェシカ・エドワーズ「死ぬ覚悟があったら、どんなひどいことをやってもいいと言うの?」(本伝第21話)

ルグランジュ提督の第11艦隊を失ったグリーンヒル大将率いる救国軍事会議は、経済も破綻し、窮地に立たされます。ヤン艦隊が首都星ハイネセンを包囲するのも時間の問題。そんな中、事件が発生します。軍国主義に反対する市民が、民主派議員の呼び掛けに応じ、ハイネセンスタジアムにかけつけたのです。その数は20万人以上。そして、市民に呼び掛けた民主派議員が、ヤンの学生時代からの親友ジェシカ・エドワーズです。

グリーンヒル大将は、ハイネセンスタジアムの鎮圧に、クリスチアン大佐を派遣します。この人選は、後ほどはっきりしますが、明らかに誤りでした。なぜなら、クリスチアン大佐は根っからの軍国主義者で、ハイネセンスタジアムのデモを平和的に解散させるなど、微塵も考えていなかったからです。

クリスチアン大佐は、市民を何人か並べ、殴り、脅しました。「死ぬ覚悟もないやつが偉そうなこと言いやがって!」。そこに割って入ってジェシカは叫びます。「死ぬ覚悟があったら、どんなひどいことをやってもいいと言うの?」。しかし、ジェシカはこの後、言ってはいけないことを言ってしまいます。すなわち、「暴力によって自分が信じる信念を他人に強制する人間は後を絶たないわ。銀河帝国を作ったルドルフも、そして大佐、あなたも。あなたはルドルフの同類よ。それを自覚しなさい。そしている資格のない場所から出ておいき!

この一言がまずかったのは、それが真実だったからです。そして、クリスチアン大佐は、それを公に絶対に認められなかった。なぜなら、銀河帝国に対抗するために、自由惑星同盟が皇帝と同じことをしてしまっては、自らの存在意義を否定することになるからです。そして、この後のクリスチアン大佐の反応は、激烈なものになったのでした。

ジェシカ・エドワーズ「死ぬ覚悟があったら、どんなひどいことをやってもいいと言うの?」(本伝第21話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第21話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

ジェシカの行動は、もちろん勝算に値するものだと思います。軍国主義のクーデターの下、不安にさいなまれる市民の心の支えに自らがなる、その行動は、純粋に市民を愛する議員のあるべき姿だと思います。

しかし、ここでの学びは、そこではないと思います。むしろ、信念同士が逃げ道をふさいでぶつかると、必ずどちらかが(あるいは双方が)倒れる、という点が重要だと思っています。ジェシカはクリスチアン大佐の逃げ道をあからさまに塞ぎました。お互いに引くに引けない状況になった、と言えます。

これは、ハイネセンスタジアムにクリスチアン大佐を派遣したグリーンヒル大将の落ち度でもあると思います。ジェシカ・エドワーズは既に反戦派で知られる議員でしたし、戦没者慰霊会でトリューニヒト現議長にも歯向かったことも、グリーンヒルは良く知っています。(グリーンヒル大将はそこにいましたから)。また、クリスチアン大佐が過度な軍国主義者であることも、クーデターのメンバーに加えた時点から分かっていたことだと思います。なぜ、水と油の二人を対決させたのか。今回の事件は、事の発端はハイネセンスタジアムではなく、救国軍事会議の会議室から始まったとみるべきだと思います。

そして、残念なことに、信念を絶対に曲げない二人が激突し、お互いに散るという結果になってしまいました。

また、もっと恐ろしいのは、この結末を最も歓迎したのは、この時地下に潜んでいた国家元首トリューニヒトだという事実です。トリューニヒトにとってこの事件は、自身に歯向かった民主派議員ジェシカ・エドワーズと、クーデターを起こした救国軍事会議の共倒れだからです。そのことを考慮すると、クリスチアン大佐をハイネセンスタジアムに派遣させたのは、その会議の場に居合わせたベイ大佐(実はトリューニヒトのスパイ)の可能性があります。そう仕向けることがトリューニヒトの意に沿うことは、ベイ大佐であれば十分に理解できたからです。実際、ベイ大佐は救国軍事会議の分裂を誘う発言をしています。

そう考えると、ジェシカもクリスチアン大佐も、二人ともトリューニヒトの陰謀の犠牲者と言えるのかもしれません。

2021年6月27日日曜日

バグダッシュ「主義主張なんて生きるための方便です」(本伝第21話)

唯一の実戦部隊であるルグランジュ提督の第11艦隊が敗北する前から、そもそも救国軍事会議にとってヤン・ウェンリーは目の上のたんこぶでした。そこで、刺客を派遣して暗殺しようと試みます。その任に当たったのが、情報部のバグダッシュ中佐でした。

バグダッシュ中佐の試みは、要塞防衛司令官シェーンコップの機転により失敗に終わります。バグダッシュが疲れてタンクベッド(ウォーターベッドの超強力版)で寝ているところ、シェーンコップは冷凍睡眠にモードを切り替えます。そして、バグダッシュはルグランジュが敗れるまで目を覚ますことはありませんでした。もっとも、本当に暗殺しにきていたとしても、成功したかどうかは怪しいのですが。(バグダッシュは情報戦のエキスパートですが、戦闘のエキスパートではありませんので)。

しかし、バグダッシュの物凄いところは実はこの後です。ルグランジュ提督がヤンに敗れた直後(つまり冷凍睡眠から解放された直後)、すぐさまヤン艦隊への鞍替えを発表します。「クーデターの失敗はもはや時間の問題」と、仲間をあっさりと切り捨てるのです。その様を見たヤンから「そう簡単に主義主張を変えられるのかね?」と聞かれると、「主義主張なんて生きるための方便です」と軽く言ってのけました。

バグダッシュ「主義主張なんて生きるための方便です」(本伝第21話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第21話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

個人的には、こういう人の方が人間としては実はまともなんじゃないか、と思います。人間として最も大事なのは自分であり、自分を方向づけるために使われる手段として、主義や主張があるというわけです。目的が自分で、主義主張は手段。

逆に、主義や主張を前面に出して、それに賛同しない他人を貶める人間が多くいます。国民国家論もそれの一種です。宗教戦争もそれに近い話だと思います。(宗教の全てを否定するつもりはありません)。彼らにとって、主義主張が目的で、自分や他人は手段です。そんな彼らと比べて、バグダッシュのタイプは付き合いやすいタイプではないかと思います。

全ての主義主張が悪だというつもりはありません。私にも主義主張はあります。ただ、世の中に多くの主義主張があり、その主義主張が一致する可能性は高くはないので、それが目的になると歪みが生じてしまう、という点が問題なのだと思います。

他方で、バグダッシュが裏切りやすいタイプであることも確かです。ヤンは後ほどユリアンに語っていますが、「バグダッシュはきちんと計算ができる男だ。私が勝っているうちは、裏切ったりしないよ」ということで、ヤンが落ち目になれば裏切る可能性があることを示唆しています。自身が生きる道を懸命に探しているタイプにとって、どこに属しているかに拘りはない、状況次第で動く、ということだと思います。

補記:ただ、ヤンはそう言っていますし、ユリアンもかなり後までバグダッシュを警戒していますが、実はこの人(バグダッシュ)、案外理想を求める人なんじゃないかなぁ、とも思います。結局最後までヤンやユリアンの理想にお付き合いしますので。単に、この時まで、ついていきたくなる理想や上司に巡り合えなかっただけでは、と思います。この後、幾度となくヤンが不利になる場面(ハイネセンでの拘禁時など)や、逃げ出せる場面がありましたが、初登場当時のキャラは身を潜め、むしろヤン艦隊に多くの献身と貢献をしています。

2021年6月19日土曜日

ルグランジュ中将「この世で最も尊ぶべきは献身と犠牲」、ヤン・ウェンリー「かかっているのはたかだか国家の存亡だ」(本伝第21話)

自由惑星同盟で元総参謀長ドワイト・グリーンヒル(ヤンの副官フレデリカのお父さん)がクーデター(自らを救国軍事会議と命名)を起こした後、ヤン・ウェンリーは反乱を起こした惑星群を次々と鎮圧していきます。※白兵戦がメインのため、活躍するのは主にシェーンコップ率いるローゼンリッターです。

救国軍事会議が保有する艦隊は、ルグランジュ中将率いる第11艦隊。ヤンが正式に救国軍事会議への参加を拒否したことで、全面対決となります。その際、それぞれの司令官が全軍を鼓舞するために発した言葉は、正反対のものでした。

ルグランジュ「祖国への献身を果たせ。この世で最も尊ぶべきは献身と犠牲であり、憎むべきは臆病と利己心である」

ルグランジュ中将「この世で最も尊ぶべきは献身と犠牲」(本伝第21話)

ヤン「かかっているのはたかだか国家の存亡だ。個人の自由と権利に比べたら、たいして価値のあるものじゃない」
ヤン・ウェンリー「かかっているのはたかだか国家の存亡だ」(本伝第21話)

『銀河英雄伝説』DVD 本伝第21話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

大事なものはどちらか、ということの主張の違いが典型的に表れています。組織が大事なのか、個人が大事なのか。組織を守るために個人の献身が必要なのか、個人の自由を守るために組織が手段としてあるのか。どちらかが間違っているということではなく、主義主張の違い、ということだと思います。そして、本質的に「自由の国」である自由惑星同盟では、ヤンの考え方に共感する将兵(特に下級兵士)が多く、この戦いもヤンの勝利に終わります。

パワハラ等の言葉が出てきたことからも分かるように、現代の世の中、特に先進国では、個人が大事という方向に進んでいるように思います。しかし、まだまだ国のために個人が犠牲になって当然、という価値観も健在です。

そもそも、国民が存在して、彼らが国のために防衛戦争をしたり他国を攻撃するという発想(国民国家)は、近代ヨーロッパで生まれて200年程度が経ったにすぎません。それが太古からの当たり前の事実のように思われているのは、子供時代の歴史教育の結果に過ぎないのだと思います。また、そもそも近代国民国家が必要とされたのは、戦争に強い軍隊が必要だったためですが、現代でも同様の必要性があるかどうかは、意見の分かれるところだと思います。ここでの学びは、歴史的必要性に応じて有効な主義は変わる、ということです。

あとは個人的な好き嫌いですね。私はヤンの考え方が大好きなので、このやりとりに始めて触れたときは(小説の第2巻)、ヤンの「個人第一」の考え方に大賛成でした。しかし、社会人になってビジネスの世界に入ると、(多かれ少なかれ)ルグランジュの考え方も必要な場合がある、と考えるようになりました。

ところで、ここではもう一つ学びがあります。主義主張と人間性の組み合わせは、時々問題を生じさせるということです。純粋でまともな人間が「組織第一」という思想に染まった時と、怠け者で建前と本音をうまく使い分けできる人間が「個人第一」という思想を盾にする場合が特に問題だと思っています。前者は自分や他人を無意識に壊しますし、後者はフリーライダーになるためです。前者は救国軍事会議のドワイト・グリーンヒルやここで敗北するルグランジュ、後者の代表例は救国軍事会議とヤンの激突で漁夫の利を得るトリューニヒト議長です。

2021年6月13日日曜日

オフレッサー上級大将「罠だ、これは罠なんだ」(本伝第20話)

シュターデン提督は敗北後、近くにあるレンテンベルク要塞に逃げ込みます。レンテンベルク要塞は貴族連合軍の本拠地ガイエスブルク要塞に迫る上で、重要な拠点でした。そのため、ローエングラム侯ラインハルトはレンテンベルク要塞の攻略に向かいます。

ここの陸戦部隊を率いていたオフレッサー上級大将は帝国軍の守旧派で、とにかくローエングラム侯爵ラインハルトのことが大嫌いという人でした。また、一対一の戦いには滅法強く、そのため白兵戦は絶対に避けるべきでしたが、残念ながら彼が守る通路を占拠しない限り、要塞は占領できないという状況になっていました。

幾度となく突入するラインハルトの白兵部隊を、一人残らずなぎ倒していくオフレッサー。恐らく、小隊単位で死者が出たのでは、と思われます。しかし、ミッターマイヤー、ロイエンタール両提督の仕掛けた「落とし穴」という古風な罠にかかって捕縛され、後は処刑を待つのみ、というところまでオフレッサーは追い込まれます。部下を大量に殺された両提督のみならず、ラインハルト陣営では即刻彼を処刑すべきという声が大多数を占めていたためです。

ところが、参謀長オーベルシュタインの進言で、オフレッサーは生きたまま解放され、貴族連合軍の当主ブラウンシュヴァイク公の下に帰還しました。無邪気にブラウンシュヴァイク公の下に戻ってきたオフレッサー。しかし、ブラウンシュヴァイク公以下門閥貴族達は、オフレッサーとラインハルトが密約を交わして助けてもらったと考えました。その雰囲気を察したオフレッサーは「罠だ、これは罠なんだ!分からんのか、馬鹿どもが!」と必死で弁明するものの、結局、貴族達が見守る中、アンスバッハ准将の手で射殺されたのでした。

オフレッサー上級大将「罠だ、これは罠なんだ」(本伝第20話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第20話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

ここでの学びは、一度ゼロベースで俯瞰して自身の状況を見るべき、という点です。

オフレッサーは、頭の悪い人では決してありません。落とし穴に嵌ってはしまいましたが、門閥貴族の中における自身の位置づけや振る舞い方は良く考えられていますし、シェーンコップのかつての上官である曲者リューネブルクとも上手に駆け引きができています。しかし、今回はあまりに先入観に溺れすぎ、特に自分自身の「見え方」に対して盲目すぎたのだと思います。

それは、「自分が疑いなく門閥貴族の仲間であり、裏切ることなどありえない」ということが、誰の目にも疑いようのない事実だと考えてしまった、ということです。これまでの長い間、ラインハルトに対して示してきた嫌悪感と態度も、その考えを後押ししています。周囲からもそう見られている、という自覚が大きすぎました。そのため、解放されてブラウンシュヴァイク公の下に戻った時に、自分が裏切り者の疑いを受けるとは、全く想定していませんでした。

他方で、ブラウンシュヴァイク公は、起きている事実を並べ、オフレッサーとは反対の結論を導き出しました。これまで明らかにラインハルトに敵対していたオフレッサー、しかも大勢の兵士を殺している、その彼が処刑されず許されて自分の下に現れた。ついでに、これはオフレッサーは知らない事実でしたが、彼以外の主だったメンバーは、ラインハルトにより処刑されていました。そのため、「オフレッサーだけ特別に許された。これは何か裏交渉があったに違いない」と、ブラウンシュヴァイク公は考えます。そして、疑いもせず、彼を処刑してしまいます。

「自分がそう思っているのだから、周りもそう思っているに違いない」という妄想に端を発した悲劇ですが、そうなることを見越してオフレッサーを解放したオーベルシュタインの慧眼が光る一幕でした。

2021年6月6日日曜日

ヒルデスハイム伯爵「これで敵が動かぬ理由に合点がいくではないか」(本伝第20話)

貴族連合軍(リップシュタット連合軍)の作戦会議で総司令官メルカッツが(色々な理由から)出撃を認めたため、新皇帝を擁立するローエングラム侯爵ラインハルトと貴族連合軍は、内乱勃発後、初めて戦火を交えることになりました。

ローエングラム侯爵側の指揮官は、ウォルフガング・ミッターマイヤー中将。アムリッツァ星域会戦で、自軍の進行速度が速すぎて自由惑星同盟の第9艦隊を追い抜いてしまったため、「疾風ウォルフ」というあだ名がついた有能な提督です。(もっとも、個人的には、アムリッツァでの彼の作戦は実は失敗だったんじゃないかと思います。どこにも語られていませんが、第9艦隊は司令官アル・サレム提督が重傷を負うものの、後を継いだモートン提督は秩序をもって撤退できているためです。恐らく、スピードを出しすぎて止まれなかったせいで、攻撃のタイミングが理想から一歩遅れたのではないでしょうか)。

一方、貴族連合軍側は、「理屈倒れの」シュターデン提督を筆頭に、貴族提督のヒルデスハイム伯爵という陣営でした。

両陣営は、ミッターマイヤーが敷設した機雷群(熱反応型・自律移動型ですので、艦隊が近くを通ると餌食になります)を挟んで、数日間にらみ合いを続けます。疾風ウォルフの艦隊なのに、全く動かない。シュターデンは「罠がある」と見込みますが、経験のないヒルデスハイムはそうは思いません。そこに、丁度よくミッターマイヤー側の通信を盗聴できた旨が、シュターデンとヒルデスハイムの下に伝えられます。曰く、「ミッターマイヤーはローエングラム侯爵の援軍を待っている」、と。

これにヒルデスハイム伯は意気込みます。すなわち、「これで敵が動かぬ理由に合点がいくではないか」ということです。もちろん、これはミッターマイヤーの策略でした。シュターデンの方は「こんなに簡単に傍受できるのはおかしい」と、真実を突くのですが、ヒルデスハイム伯爵の勢いに負けて動いてしまい、貴族連合軍は初戦で大敗するのです。

ヒルデスハイム伯爵「これで敵が動かぬ理由に合点がいくではないか」(本伝第20話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第20話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

ここでの学びは、自分の狭い料簡と見た目だけで都合よく判断してはいけない、ということです。

ヒルデスハイム伯爵は、艦隊戦の経験がありません。そのため、「敵が動かない」→「援軍を待っているという連絡が入った」→「援軍が来る前に戦わないと負ける」、という、超短絡的な考え方をしてしまいます。自分の願望(「戦いたい」)を正当化するため、都合よく目の前の事象を解釈していると言えます。一番やってはいけないことです。ヒルデスハイム伯爵のここでの最もあるべき姿は、自身の経験不足を素直に認め、事実を客観的に観察し、自身の短絡的な考えを批判的に再考する、ということでした。しかし、当時のゴールデンバウム朝貴族は、もっぱら「自分が絶対正しい」から思考がスタートしますので、自身の考えを批判的に見るなんて、そもそも不可能でした。残念ながら。

ビジネスの世界でも、これはよくあることだと思います。私自身もそうです。根拠のない自信というか、自分の知らない世界があることを「知らない」ということの恐ろしさに、気づいていない時代というものが、誰にもある、ということだと思います。(一言で言うと、「若気の至り」です)。

そして、もう一つの学びは、知りすぎると逆に判断できない、ということです。

シュターデン提督は、経験はそこそこで、艦隊戦の知識は豊富です(恐らく、帝国軍の中で一番だと思います)。そして、「(疾風ウォルフなのに)敵が動かない」→「何か策略がある(可能性が多すぎて決めきれない)」→「都合のよい通信が傍受できた」→「何か策略がある(やっぱり見極めきれない)」と、知識が豊富であることが逆に仇になり、選択肢が豊富に浮かびすぎて、決断できませんでした。最終決断ができたのは、皮肉にも、ヒルデスハイム伯爵が自身の浅はかな考えを押し付けてきたからです。

そう考えると、この二人、実はひとつ間違えると理想の組み合わせだったかもしれません。メルカッツ総司令官の副官シュナイダーは、彼らを「現実感覚に欠けるシュターデン提督と血気にはやるヒルデスハイム伯」と酷評していますが、もしシュターデンが理論重視であっても手堅い作戦案をいくつか立て切ることができて、ヒルデスハイムが実行を後押し出来ていたら、どうなっていたか。戦術面の巧拙がありすぎるため、貴族連合軍が勝ち切ることはなかったでしょうけど、もしかしたら善戦していたかもしれません。

2021年5月29日土曜日

ベルンハルト・フォン・シュナイダー「一度痛い目にあった方が身のため、ということですか」(本伝第20話)

新皇帝に対抗してブラウンシュヴァイク公爵の下に集結した貴族連合軍(リップシュタット連合軍)は、総司令官として老練なメルカッツ上級大将を迎えました。メルカッツ提督が自由な手腕を発揮すれば、皇帝を擁立するローエングラム侯ラインハルトも苦戦を強いられたはずです。なぜならば、数の上では貴族連合軍の方が優勢だったからです。

しかしながら、メルカッツ提督は軍の統率に非常に苦労することになります。実務面で有能ではない提督や、戦いの場に出たことのない貴族提督が多数参戦していたからです。作戦会議の場では、「理屈倒れ」と揶揄されるシュターデン提督が、華麗で魅力的ではあるものの実行不可能な作戦を披露してしまい、場が紛糾します。

メルカッツはこの場を鎮めるため、シュターデン提督と貴族達に出撃を許可しました。この際にメルカッツの副官であるシュナイダー少佐が、上官の真意をこの言葉で見事に突いています。曰く、「一度痛い目にあった方が身のため、ということですか」。メルカッツの「言葉で言っても分からんだろうからな」という返しが、当時の貴族連合軍の実情を如実に表していて、痛々しい気持ちになるシーンです。

シュナイダー「一度痛い目にあった方が身のためと、いうことですか」(本伝第20話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第20話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

ここでの学びは、世の中、言葉で説明できるのは半分程度、ということです。

シュターデンの作戦が実行不可能であることを言葉で説明し、ブラウンシュヴァイク公を含む連合軍のメンバーに「理解」を求めることは、大変ではあるものの、可能だったと思います。しかし、メルカッツはそれをしませんでした。なぜなら、たとえ言葉の上で理解しても、彼らは腹落ちをしてくれないと考えたからです。

人間が物事を知って、理解して、腹落ちするまでには、以下のように複数の「段階」があります。

 STEP0:何も知らない状態

 STEP1:知っているだけで理解できていない状態

 STEP2:理解しているが腹落ちしていない状態

 STEP3:腹落ちしている状態

STEP3までいかないと、人間はそれを自分事として捉えられないですし、身に付き方も中途半端になります。子供の頃に自転車に乗ったり、泳げるようになったりと、色々とできることが増えると思いますが、まさに自転車の乗り方を「理屈だけは」分かっている状態、泳ぎ方を「文字の上では」理解している状態が、上記のSTEP2に当たります。

そして重要なのは、STEP2からSTEP3に持っていけるのは、自分しかいない、という点です。誰かに教わることはできません。自転車に乗れるようになるのは、自分でやってみて感覚を掴む以外に方法がありません。水泳も一緒です。

そのため、メルカッツは「言葉で言っても分からんだろう」と、貴族達を戦いの場に出撃させたのでした。STEP3まで到達していない人々にいくら言葉で説明しても、STEP2のレベルに持っていくのがやっとですし、最悪の場合、そもそも理解すらしてもらえないリスクがあります。自転車に乗れたことのない人に、自転車に乗った際の気持ち良さやバランス感覚を共有することが困難、ということと同じです。

逆に、ラインハルト陣営は、戦いに関してはSTEP3のレベルに達している提督ばかりが集まっています。そうなると、言葉での説明も最小限で済みます。皆、自転車に乗れるかの如く、同じ感覚で戦いができるからです。歴史の世界でもビジネスの世界でも、チームとしては全員がそのレベルに達していると、無類の強さを発揮するのだと思います。

2021年5月23日日曜日

ドワイト・グリーンヒル「こうするより他に手段はなかったのだ」(本伝第19話)

自由惑星同盟軍のクーデターの首謀者は、統合作戦本部の元総参謀長、ドワイト・グリーンヒル大将でした。彼は帝国軍ローエングラム侯ラインハルトが送り込んだスパイ、アーサー・リンチによるクーデター計画に乗り、実行に移しました。

しかし、グリーンヒル大将は野心家ではありません。むしろ、軍国主義的な雰囲気の強い同盟軍の中でも、分別のある良識派の一人でした。そんな彼がなぜクーデターを起こしたのか、その答えが、彼が亡き妻の墓参りをするこのシーンで語られています。

当時の自由惑星同盟は、民主主義が崩壊しつつありました。己の利権を追及する政治家、その政治家に責任を丸投げして政治に関心を持たない市民。そして、その状況を憂慮し、自らが状況を変えるキーマンになろうとする軍部。同盟軍の中では、特に若い層を中心に、自分達が国を変えるべきと考え、日々の鬱憤をため込んでいる姿は、想像に難くありません。

そんな彼らに出口を作る、その思いで、グリーンヒル大将はアーサー・リンチのクーデター計画に乗ることになります。まさに、「こうするより他に手段がなかったのだ」ということです。この言葉は「若い人たちは性急でな。私が立ち上がらなかったら、誰が彼らを止められるだろうか…」と続きます。もしかしたら、彼にとって、クーデターの成否や、自身の行く末は、あまり関係なかったのかもしれません。

ドワイト・グリーンヒル「こうするより他に手段はなかったのだ」(本伝第19話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第19話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

ここでの学びは、良識派ほど貧乏くじを引く、という点です。グリーンヒル大将の選択を蔑むつもりはありません。彼の行動は、結果として間違いだったと記録されるでしょうが、当時の状況から、最善と思われる行動を本人として採った、ということですので、責められるものではないと思います。

しかしながら、本当に無責任な人は、こういう役回りを引き受けないと思います。あれこれ理由をつけて、逃げ回った挙句、引き受けそうな責任感の強い人間に押し付けるのが常です。そして、今回も現体制や軍部の不穏な動きを憂慮し、責任感と良識の塊であるグリーンヒル大将が引き受けることになった。こういう話は、なにも銀河英雄伝説の中だけでなく、現実社会、ビジネス世界の中でも、あふれています。そして、無責任な人間がつらい役回りを避けて出世し、責任感と良識のある人間が貧乏くじを引いて、時に倒れるのです。

そして、もう一つの学びは、潮流に真っ向から逆らうのは得策ではない、という点です。当時、自由惑星同盟の民主政治が腐敗の一途を辿っているのは、少し知識のある人間からすると、当然の事実として認識されていたと思います。そして、歴史的に見ても、それはある程度不可逆的であり、結末は国家の消滅(アテネなど)、専制君主の誕生(銀河英雄伝説の世界だと皇帝ルドルフ、現実世界だとローマやナチス)、今回のようなクーデター(直近だとミャンマー)になるのがオチでしょう。

その大きすぎる流れ、潮流に対して、真正面から、しかも単独で臨むのは、勇気ある行動というより、無謀ではないでしょうか。これより少し後、ヤン・ウェンリーは同盟政府を打倒するのではなく、銀河帝国の新体制と共存させることで、アンチ・テーゼとしての民主主義を細く長く存続させるというプランを立てました。自由惑星同盟の歴史的責任を、そのくらいのレベルの命題にまで小さくしないと、国としての能力に見合わないという見立てもあったと思います。

他方で、グリーンヒル大将は、真っ向勝負に出ました。主観で見る当事者と客観的な読者では持っている情報量が違うのでアンフェアではありますが、もしグリーンヒル大将が少しでも勝つ気でいたのであれば、この時代の潮流をもう少し慎重に読みきる必要があった、と思います。彼が思っているよりもはるかに、自由惑星同盟は疲弊していて、もはや建国時の理想は存在しない。もう元には戻れない。そうした前提の元に計画が組み立てられていたら、また違った結果になったのではないか、と思います。

2021年5月22日土曜日

ヤン・ウェンリー「その五分と五分の条件を整えるのが戦略だ」(本伝第19話)

自由惑星同盟でクーデターが発生しました。首謀者は、ドワイト・グリーンヒル大将。元統合参戦本部の総参謀長で、アムリッツァ星域会戦の責任を取り、査閲部長(監査部です)に左遷されていました。ヤン・ウェンリーの副官、フレデリカの父親でもあります。

クーデター自体は、銀河帝国のローエングラム侯ラインハルトにより送り込まれたスパイによるものでしたが、同盟における当事者たちは、皆本気だったようです。それだけ自由惑星同盟の政治体制が腐っていて、それに嫌気がさしている人間が多かった、ということだと思います。

さて、クーデターへの対応方法を熟慮しているヤンに対し、陸戦部隊ローゼンリッターを率いるシェーンコップが、こうささやきます。「クーデターの連中が現体制を一掃した後に、あなたが首都に乗り込んで独裁者をやればいい」。

独裁者なんてやるつもりのないヤンは、「全然柄じゃないね」と一蹴します。しかし、ここで引かないのがシェーンコップの太々しいところ。「軍人だって、そもそもあなたの柄じゃないでしょう」と繋げながら、「五分と五分の条件なら、あなたはローエングラム侯にだって勝てる」と更に煽っていきます。

ここまでくると、普段温厚なヤンも、反応に棘が混じります。曰く「その五分と五分の条件を整えるのが戦略だ」、戦略部分を抜いて優劣を論じても意味がないよ、と。

ヤン・ウェンリー「その五分と五分の条件を整えるのが戦略だ」(本伝第19話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第19話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

シェーンコップは悪い人間ではありません。自分が心酔する(本人は表立ってそんなこと言いませんが、行動にそれが表れていると思います)リーダーに、できるだけ高いところに行ってほしい、という願いが、他のメンバーより強すぎるのかな、と思います。現実は、全く逆の方向に行ってしまいますが。

ここでの学びは、文字通り、戦略重視、という点です。戦場で五分五分になった場合、現場指揮官の指揮能力の違いが結果を左右します。戦場で重視されるのは、戦術です。しかし、戦場で五分五分になることは滅多にありません。少しでも自軍に有利な状態で開戦しようとするのが普通です。この、「少しでも自軍に有利な状態で開戦」するために弄するのが戦略であり、帝国軍のラインハルトがその戦略に長けている点をヤンは高く評価しています。

今回も、帝国軍のラインハルトは、自軍が貴族連合軍(リップシュタット連合軍)と同盟軍の挟み撃ちにされる危険性を回避するため、同盟軍をクーデターで分裂させました。これは貴族連合軍との闘いを五分五分以上に持ち込むための戦略だったと言えます。

ビジネスの世界でも同様のことが言えます。受注した案件の遂行や、その中での一つ一つの打合せをうまくこなすことも大切ですが、それは戦術レベルの話にすぎません。それよりも、案件や打合せの成功確率を前もって上げておく活動、戦略レベルの活動が、ビジネスマンには本来、より求められるのではないか、と思います。すなわち、戦う前から既に勝っている状態をいかに作るか、が重要、ということです。

2021年5月16日日曜日

ユリアン・ミンツ「兵士は楽でしょうけど、司令官は苦労ですね」(本伝第19話)

自由惑星同盟内でクブルスリー統合作戦本部長暗殺未遂事件が発生したこととほぼ時を同じくして、同盟領の4つの惑星系(ネプティス、カッファー、パルメレンド、シャンプール)で同時に反乱が発生しました。※銀河帝国のローエングラム侯ラインハルトの計略によるものです。

これらの4つの反乱に対して、新たに統合作戦本部長の座についてドーソン大将は、年下で同じ大将位にあるヤン・ウェンリーをこき使うため、イゼルローン駐留軍の1艦隊のみで対応するよう命じます。

さすがに1艦隊で全て制圧させるような命令が来ると想定していなかったヤンは、4つの反乱をいかに効率よく各個撃破するか、について、その場に居合わせたユリアン(ヤンの養子。戦争孤児)、キャゼルヌと話合いますが、最終的に「同じ同盟軍なので、そこまでのことはしたくない。なるべく戦わずに済む方法を考えて、できれば相手の降伏にもっていけるようにしたい」と結論付けます。その結論に対するユリアンの反応が、「兵士は楽でしょうけど、司令官は苦労ですね」でした。

ユリアン・ミンツ「兵士は楽でしょうけど、司令官は苦労ですね」(本伝第19話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第19話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

ユリアンの感想に対するヤンの言葉は、当時の同盟軍だけでなく、現代で頑張っているビジネスマンにとっても、最大限の皮肉がこもった言葉になりました。曰く、「その通り。けれども、世間では、兵士にも苦労をかける司令官の方が、自分も苦労していると思うものなのさ」。

ここでの学びは、表に見えるものだけでは、リーダーの能力を評価しないこと、です。ここはとても良く間違えられるところなので、丁寧に説明したいと思います。

何事も一番良い状況なのは、「トラブルが起きないように事前に手を打ち、起きた際も最小限の対応で済むよう事前に策を講じておく」ことであり、それができるリーダー(リーダータイプAと仮に設定します)が本来は望ましいリーダーであるはずです。

他方で、トラブルが起きた際に周りを巻き込みながら最大限努力をして鎮めるタイプのリーダー(リーダータイプBとします)は、対応力は評価できるものの、リーダータイプAのリーダーよりも、組織としては一段落ちる評価をするのが妥当でしょう。そして、何も事前の手を打てず、トラブル時に対処もできないリーダー(リーダータイプCとします)が、一番評価が低くなるのは、異論の余地がないと思います。

問題は、トラブルがない状態の場合が続いたとして、それが「事前に手を打って保たれた平和」なのか、「ただ何も起きないだけの平和」なのかが区別がつかない、という点です。

状況をまとめると、平時(トラブルがない期間)は、

 リーダータイプA:事前に対処して平和を作っている
 リーダータイプB:何もしていない、しかし、見た目の結果はAと一緒
 リーダータイプC:何もしていない、しかし、見た目の結果はAと一緒

ということになるため、本来はタイプAが最も評価されるべきですが、見た目には違いが分からないため、評価に差をつけるのは表面上は困難です。

有事(トラブル発生時)については、

 リーダータイプA:最小限の対応で沈めている
 リーダータイプB:最大限の努力で対応、Aより頑張っているように見える
 リーダータイプC:対応できない

となります。有事にBを評価しがちなのは、Aの事前策が見えないからです。

総合評価となると、平時は差が出ないため、有事に目立つ方、つまりリーダータイプBが「一般的に」評価されると思います。そのため、ヤン(ご本人はリーダータイプA)の言うように、「世間では、兵士にも苦労をかける司令官の方が、自分も苦労していると思うもの」という皮肉につながるのです。

そして、リーダータイプAが評価されるのは、悲しいことに、彼がいなくなってから、ということが断然多いと思います。今まで事前に潰されてきたトラブルの芽が、リーダータイプAの人間がいなくなった途端に、トラブルとして噴出する、という事態は、容易に想像できます。まさに、失って初めてその大切さに気づく、ということです。

従って、そのようなリーダータイプAのリーダーを組織にとどめておくためには、表面的な事象だけでなく、「なぜこの平和が保たれているのか」について、より深く洞察する必要があるのだと思います。

2021年5月4日火曜日

クブルスリー大将「私の権限は手順を守らせるためにあるのであって、破らせるためにあるのではない」(本伝第19話)

銀河帝国で皇帝崩御に伴う大規模な内戦が勃発しようとしている頃、自由惑星同盟ではラインハルトが送り込んだスパイ、アーサー・リンチ元同盟軍少将によるクーデター計画が着々と進められていました。

その作戦の手始めとして狙われたのが、シドニー・シトレ元帥の後任となったクブルスリー統合作戦本部長です。宇宙艦隊司令長官となったビュコック大将が「分かった人物」と評したように、華々しい武勲はないものの、まともな人物だったと思います。

そのクブルスリー大将の前に現れたのが、アムリッツァ星域会戦の作戦を立案したフォーク准将です。フォークは病気療養中でしたが、軍への早期復帰をクブルスリーに願い出ます。そのフォークに対するクブルスリーのカッコいい返答が、「私の権限は手順を守らせるためにあるのであって、破らせるためにあるのではない」です。ここまでは良かった。

クブルスリー大将「私の権限は手順を守らせるためにあるのであって、破らせるためにあるのではない」(本伝第19話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第19話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

問題はこの後です。実は、フォークのこの申し入れは、擬態でした。彼の真の目的は、クブルスリーの暗殺です。断られた直後、フォークはブラスター(拳銃)を抜き、クブルスリーを撃ちます。クブルスリーは死亡しませんでしたが、重傷を負い、表舞台から去っていくことになりました。

今回の一つ目の学びは、権限のあるべき姿をリーダーが守る、という点です。クブルスリーのこの言葉は全くその通りですが、世の中のリーダーは、実は自分から手順を破っていることが多いのではないでしょうか。アムリッツァ星域会戦の作戦案が評議会を通ったのも、自由惑星同盟のリーダーたる評議会議長が手順を無視したからです。ビジネスの世界でも、自分は手順を破るのに、部下には押し付ける人がいます。また、自分も部下にも手順破りを容認している人さえいます。そんな世の中で、クブルスリーのこの一言は、非常にまともで価値のある一言だったと思います。

もう一つの学びは、リーダーはリスクを最大限気にするべし、という点です。ここの場面、脇が甘いとしか言えないことが満載なことにお気づきでしょうか。フォーク准将は病気療養中のため、そもそも統合作戦本部に入場する権限はなかったと思われます。しかし、彼は簡単に中に入り、しかも統合作戦本部長と直接会話できてしまっています。リスク管理をしっかりしていれば、そんな場面は起こりえなかったはずです。また、クブルスリーを守るはずのSP達は、守るどころか遠巻きに事の次第を見守っています。クブルスリー自身も、フォークの登場を全く不審に感じることなく受け入れ、しかも説教することに集中しすぎてブラスターを抜かれるまで行動できませんでした。

クブルスリー本人というより、自由惑星同盟の軍部自体が緩んでいたのだと思いますが(また、そこにうまく付け込んだクーデター側のファインプレイとも言えますが)、リーダーと取り巻きがこんな杜撰なリスク管理をしていると、敵の思う壺に簡単に嵌ってしまう、本件はその好例だと思います。

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