2021年6月30日水曜日

ジェシカ・エドワーズ「死ぬ覚悟があったら、どんなひどいことをやってもいいと言うの?」(本伝第21話)

ルグランジュ提督の第11艦隊を失ったグリーンヒル大将率いる救国軍事会議は、経済も破綻し、窮地に立たされます。ヤン艦隊が首都星ハイネセンを包囲するのも時間の問題。そんな中、事件が発生します。軍国主義に反対する市民が、民主派議員の呼び掛けに応じ、ハイネセンスタジアムにかけつけたのです。その数は20万人以上。そして、市民に呼び掛けた民主派議員が、ヤンの学生時代からの親友ジェシカ・エドワーズです。

グリーンヒル大将は、ハイネセンスタジアムの鎮圧に、クリスチアン大佐を派遣します。この人選は、後ほどはっきりしますが、明らかに誤りでした。なぜなら、クリスチアン大佐は根っからの軍国主義者で、ハイネセンスタジアムのデモを平和的に解散させるなど、微塵も考えていなかったからです。

クリスチアン大佐は、市民を何人か並べ、殴り、脅しました。「死ぬ覚悟もないやつが偉そうなこと言いやがって!」。そこに割って入ってジェシカは叫びます。「死ぬ覚悟があったら、どんなひどいことをやってもいいと言うの?」。しかし、ジェシカはこの後、言ってはいけないことを言ってしまいます。すなわち、「暴力によって自分が信じる信念を他人に強制する人間は後を絶たないわ。銀河帝国を作ったルドルフも、そして大佐、あなたも。あなたはルドルフの同類よ。それを自覚しなさい。そしている資格のない場所から出ておいき!

この一言がまずかったのは、それが真実だったからです。そして、クリスチアン大佐は、それを公に絶対に認められなかった。なぜなら、銀河帝国に対抗するために、自由惑星同盟が皇帝と同じことをしてしまっては、自らの存在意義を否定することになるからです。そして、この後のクリスチアン大佐の反応は、激烈なものになったのでした。

ジェシカ・エドワーズ「死ぬ覚悟があったら、どんなひどいことをやってもいいと言うの?」(本伝第21話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第21話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

ジェシカの行動は、もちろん勝算に値するものだと思います。軍国主義のクーデターの下、不安にさいなまれる市民の心の支えに自らがなる、その行動は、純粋に市民を愛する議員のあるべき姿だと思います。

しかし、ここでの学びは、そこではないと思います。むしろ、信念同士が逃げ道をふさいでぶつかると、必ずどちらかが(あるいは双方が)倒れる、という点が重要だと思っています。ジェシカはクリスチアン大佐の逃げ道をあからさまに塞ぎました。お互いに引くに引けない状況になった、と言えます。

これは、ハイネセンスタジアムにクリスチアン大佐を派遣したグリーンヒル大将の落ち度でもあると思います。ジェシカ・エドワーズは既に反戦派で知られる議員でしたし、戦没者慰霊会でトリューニヒト現議長にも歯向かったことも、グリーンヒルは良く知っています。(グリーンヒル大将はそこにいましたから)。また、クリスチアン大佐が過度な軍国主義者であることも、クーデターのメンバーに加えた時点から分かっていたことだと思います。なぜ、水と油の二人を対決させたのか。今回の事件は、事の発端はハイネセンスタジアムではなく、救国軍事会議の会議室から始まったとみるべきだと思います。

そして、残念なことに、信念を絶対に曲げない二人が激突し、お互いに散るという結果になってしまいました。

また、もっと恐ろしいのは、この結末を最も歓迎したのは、この時地下に潜んでいた国家元首トリューニヒトだという事実です。トリューニヒトにとってこの事件は、自身に歯向かった民主派議員ジェシカ・エドワーズと、クーデターを起こした救国軍事会議の共倒れだからです。そのことを考慮すると、クリスチアン大佐をハイネセンスタジアムに派遣させたのは、その会議の場に居合わせたベイ大佐(実はトリューニヒトのスパイ)の可能性があります。そう仕向けることがトリューニヒトの意に沿うことは、ベイ大佐であれば十分に理解できたからです。実際、ベイ大佐は救国軍事会議の分裂を誘う発言をしています。

そう考えると、ジェシカもクリスチアン大佐も、二人ともトリューニヒトの陰謀の犠牲者と言えるのかもしれません。

2021年6月27日日曜日

バグダッシュ「主義主張なんて生きるための方便です」(本伝第21話)

唯一の実戦部隊であるルグランジュ提督の第11艦隊が敗北する前から、そもそも救国軍事会議にとってヤン・ウェンリーは目の上のたんこぶでした。そこで、刺客を派遣して暗殺しようと試みます。その任に当たったのが、情報部のバグダッシュ中佐でした。

バグダッシュ中佐の試みは、要塞防衛司令官シェーンコップの機転により失敗に終わります。バグダッシュが疲れてタンクベッド(ウォーターベッドの超強力版)で寝ているところ、シェーンコップは冷凍睡眠にモードを切り替えます。そして、バグダッシュはルグランジュが敗れるまで目を覚ますことはありませんでした。もっとも、本当に暗殺しにきていたとしても、成功したかどうかは怪しいのですが。(バグダッシュは情報戦のエキスパートですが、戦闘のエキスパートではありませんので)。

しかし、バグダッシュの物凄いところは実はこの後です。ルグランジュ提督がヤンに敗れた直後(つまり冷凍睡眠から解放された直後)、すぐさまヤン艦隊への鞍替えを発表します。「クーデターの失敗はもはや時間の問題」と、仲間をあっさりと切り捨てるのです。その様を見たヤンから「そう簡単に主義主張を変えられるのかね?」と聞かれると、「主義主張なんて生きるための方便です」と軽く言ってのけました。

バグダッシュ「主義主張なんて生きるための方便です」(本伝第21話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第21話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

個人的には、こういう人の方が人間としては実はまともなんじゃないか、と思います。人間として最も大事なのは自分であり、自分を方向づけるために使われる手段として、主義や主張があるというわけです。目的が自分で、主義主張は手段。

逆に、主義や主張を前面に出して、それに賛同しない他人を貶める人間が多くいます。国民国家論もそれの一種です。宗教戦争もそれに近い話だと思います。(宗教の全てを否定するつもりはありません)。彼らにとって、主義主張が目的で、自分や他人は手段です。そんな彼らと比べて、バグダッシュのタイプは付き合いやすいタイプではないかと思います。

全ての主義主張が悪だというつもりはありません。私にも主義主張はあります。ただ、世の中に多くの主義主張があり、その主義主張が一致する可能性は高くはないので、それが目的になると歪みが生じてしまう、という点が問題なのだと思います。

他方で、バグダッシュが裏切りやすいタイプであることも確かです。ヤンは後ほどユリアンに語っていますが、「バグダッシュはきちんと計算ができる男だ。私が勝っているうちは、裏切ったりしないよ」ということで、ヤンが落ち目になれば裏切る可能性があることを示唆しています。自身が生きる道を懸命に探しているタイプにとって、どこに属しているかに拘りはない、状況次第で動く、ということだと思います。

補記:ただ、ヤンはそう言っていますし、ユリアンもかなり後までバグダッシュを警戒していますが、実はこの人(バグダッシュ)、案外理想を求める人なんじゃないかなぁ、とも思います。結局最後までヤンやユリアンの理想にお付き合いしますので。単に、この時まで、ついていきたくなる理想や上司に巡り合えなかっただけでは、と思います。この後、幾度となくヤンが不利になる場面(ハイネセンでの拘禁時など)や、逃げ出せる場面がありましたが、初登場当時のキャラは身を潜め、むしろヤン艦隊に多くの献身と貢献をしています。

2021年6月19日土曜日

ルグランジュ中将「この世で最も尊ぶべきは献身と犠牲」、ヤン・ウェンリー「かかっているのはたかだか国家の存亡だ」(本伝第21話)

自由惑星同盟で元総参謀長ドワイト・グリーンヒル(ヤンの副官フレデリカのお父さん)がクーデター(自らを救国軍事会議と命名)を起こした後、ヤン・ウェンリーは反乱を起こした惑星群を次々と鎮圧していきます。※白兵戦がメインのため、活躍するのは主にシェーンコップ率いるローゼンリッターです。

救国軍事会議が保有する艦隊は、ルグランジュ中将率いる第11艦隊。ヤンが正式に救国軍事会議への参加を拒否したことで、全面対決となります。その際、それぞれの司令官が全軍を鼓舞するために発した言葉は、正反対のものでした。

ルグランジュ「祖国への献身を果たせ。この世で最も尊ぶべきは献身と犠牲であり、憎むべきは臆病と利己心である」

ルグランジュ中将「この世で最も尊ぶべきは献身と犠牲」(本伝第21話)

ヤン「かかっているのはたかだか国家の存亡だ。個人の自由と権利に比べたら、たいして価値のあるものじゃない」
ヤン・ウェンリー「かかっているのはたかだか国家の存亡だ」(本伝第21話)

『銀河英雄伝説』DVD 本伝第21話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

大事なものはどちらか、ということの主張の違いが典型的に表れています。組織が大事なのか、個人が大事なのか。組織を守るために個人の献身が必要なのか、個人の自由を守るために組織が手段としてあるのか。どちらかが間違っているということではなく、主義主張の違い、ということだと思います。そして、本質的に「自由の国」である自由惑星同盟では、ヤンの考え方に共感する将兵(特に下級兵士)が多く、この戦いもヤンの勝利に終わります。

パワハラ等の言葉が出てきたことからも分かるように、現代の世の中、特に先進国では、個人が大事という方向に進んでいるように思います。しかし、まだまだ国のために個人が犠牲になって当然、という価値観も健在です。

そもそも、国民が存在して、彼らが国のために防衛戦争をしたり他国を攻撃するという発想(国民国家)は、近代ヨーロッパで生まれて200年程度が経ったにすぎません。それが太古からの当たり前の事実のように思われているのは、子供時代の歴史教育の結果に過ぎないのだと思います。また、そもそも近代国民国家が必要とされたのは、戦争に強い軍隊が必要だったためですが、現代でも同様の必要性があるかどうかは、意見の分かれるところだと思います。ここでの学びは、歴史的必要性に応じて有効な主義は変わる、ということです。

あとは個人的な好き嫌いですね。私はヤンの考え方が大好きなので、このやりとりに始めて触れたときは(小説の第2巻)、ヤンの「個人第一」の考え方に大賛成でした。しかし、社会人になってビジネスの世界に入ると、(多かれ少なかれ)ルグランジュの考え方も必要な場合がある、と考えるようになりました。

ところで、ここではもう一つ学びがあります。主義主張と人間性の組み合わせは、時々問題を生じさせるということです。純粋でまともな人間が「組織第一」という思想に染まった時と、怠け者で建前と本音をうまく使い分けできる人間が「個人第一」という思想を盾にする場合が特に問題だと思っています。前者は自分や他人を無意識に壊しますし、後者はフリーライダーになるためです。前者は救国軍事会議のドワイト・グリーンヒルやここで敗北するルグランジュ、後者の代表例は救国軍事会議とヤンの激突で漁夫の利を得るトリューニヒト議長です。

2021年6月13日日曜日

オフレッサー上級大将「罠だ、これは罠なんだ」(本伝第20話)

シュターデン提督は敗北後、近くにあるレンテンベルク要塞に逃げ込みます。レンテンベルク要塞は貴族連合軍の本拠地ガイエスブルク要塞に迫る上で、重要な拠点でした。そのため、ローエングラム侯ラインハルトはレンテンベルク要塞の攻略に向かいます。

ここの陸戦部隊を率いていたオフレッサー上級大将は帝国軍の守旧派で、とにかくローエングラム侯爵ラインハルトのことが大嫌いという人でした。また、一対一の戦いには滅法強く、そのため白兵戦は絶対に避けるべきでしたが、残念ながら彼が守る通路を占拠しない限り、要塞は占領できないという状況になっていました。

幾度となく突入するラインハルトの白兵部隊を、一人残らずなぎ倒していくオフレッサー。恐らく、小隊単位で死者が出たのでは、と思われます。しかし、ミッターマイヤー、ロイエンタール両提督の仕掛けた「落とし穴」という古風な罠にかかって捕縛され、後は処刑を待つのみ、というところまでオフレッサーは追い込まれます。部下を大量に殺された両提督のみならず、ラインハルト陣営では即刻彼を処刑すべきという声が大多数を占めていたためです。

ところが、参謀長オーベルシュタインの進言で、オフレッサーは生きたまま解放され、貴族連合軍の当主ブラウンシュヴァイク公の下に帰還しました。無邪気にブラウンシュヴァイク公の下に戻ってきたオフレッサー。しかし、ブラウンシュヴァイク公以下門閥貴族達は、オフレッサーとラインハルトが密約を交わして助けてもらったと考えました。その雰囲気を察したオフレッサーは「罠だ、これは罠なんだ!分からんのか、馬鹿どもが!」と必死で弁明するものの、結局、貴族達が見守る中、アンスバッハ准将の手で射殺されたのでした。

オフレッサー上級大将「罠だ、これは罠なんだ」(本伝第20話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第20話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

ここでの学びは、一度ゼロベースで俯瞰して自身の状況を見るべき、という点です。

オフレッサーは、頭の悪い人では決してありません。落とし穴に嵌ってはしまいましたが、門閥貴族の中における自身の位置づけや振る舞い方は良く考えられていますし、シェーンコップのかつての上官である曲者リューネブルクとも上手に駆け引きができています。しかし、今回はあまりに先入観に溺れすぎ、特に自分自身の「見え方」に対して盲目すぎたのだと思います。

それは、「自分が疑いなく門閥貴族の仲間であり、裏切ることなどありえない」ということが、誰の目にも疑いようのない事実だと考えてしまった、ということです。これまでの長い間、ラインハルトに対して示してきた嫌悪感と態度も、その考えを後押ししています。周囲からもそう見られている、という自覚が大きすぎました。そのため、解放されてブラウンシュヴァイク公の下に戻った時に、自分が裏切り者の疑いを受けるとは、全く想定していませんでした。

他方で、ブラウンシュヴァイク公は、起きている事実を並べ、オフレッサーとは反対の結論を導き出しました。これまで明らかにラインハルトに敵対していたオフレッサー、しかも大勢の兵士を殺している、その彼が処刑されず許されて自分の下に現れた。ついでに、これはオフレッサーは知らない事実でしたが、彼以外の主だったメンバーは、ラインハルトにより処刑されていました。そのため、「オフレッサーだけ特別に許された。これは何か裏交渉があったに違いない」と、ブラウンシュヴァイク公は考えます。そして、疑いもせず、彼を処刑してしまいます。

「自分がそう思っているのだから、周りもそう思っているに違いない」という妄想に端を発した悲劇ですが、そうなることを見越してオフレッサーを解放したオーベルシュタインの慧眼が光る一幕でした。

2021年6月6日日曜日

ヒルデスハイム伯爵「これで敵が動かぬ理由に合点がいくではないか」(本伝第20話)

貴族連合軍(リップシュタット連合軍)の作戦会議で総司令官メルカッツが(色々な理由から)出撃を認めたため、新皇帝を擁立するローエングラム侯爵ラインハルトと貴族連合軍は、内乱勃発後、初めて戦火を交えることになりました。

ローエングラム侯爵側の指揮官は、ウォルフガング・ミッターマイヤー中将。アムリッツァ星域会戦で、自軍の進行速度が速すぎて自由惑星同盟の第9艦隊を追い抜いてしまったため、「疾風ウォルフ」というあだ名がついた有能な提督です。(もっとも、個人的には、アムリッツァでの彼の作戦は実は失敗だったんじゃないかと思います。どこにも語られていませんが、第9艦隊は司令官アル・サレム提督が重傷を負うものの、後を継いだモートン提督は秩序をもって撤退できているためです。恐らく、スピードを出しすぎて止まれなかったせいで、攻撃のタイミングが理想から一歩遅れたのではないでしょうか)。

一方、貴族連合軍側は、「理屈倒れの」シュターデン提督を筆頭に、貴族提督のヒルデスハイム伯爵という陣営でした。

両陣営は、ミッターマイヤーが敷設した機雷群(熱反応型・自律移動型ですので、艦隊が近くを通ると餌食になります)を挟んで、数日間にらみ合いを続けます。疾風ウォルフの艦隊なのに、全く動かない。シュターデンは「罠がある」と見込みますが、経験のないヒルデスハイムはそうは思いません。そこに、丁度よくミッターマイヤー側の通信を盗聴できた旨が、シュターデンとヒルデスハイムの下に伝えられます。曰く、「ミッターマイヤーはローエングラム侯爵の援軍を待っている」、と。

これにヒルデスハイム伯は意気込みます。すなわち、「これで敵が動かぬ理由に合点がいくではないか」ということです。もちろん、これはミッターマイヤーの策略でした。シュターデンの方は「こんなに簡単に傍受できるのはおかしい」と、真実を突くのですが、ヒルデスハイム伯爵の勢いに負けて動いてしまい、貴族連合軍は初戦で大敗するのです。

ヒルデスハイム伯爵「これで敵が動かぬ理由に合点がいくではないか」(本伝第20話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第20話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

ここでの学びは、自分の狭い料簡と見た目だけで都合よく判断してはいけない、ということです。

ヒルデスハイム伯爵は、艦隊戦の経験がありません。そのため、「敵が動かない」→「援軍を待っているという連絡が入った」→「援軍が来る前に戦わないと負ける」、という、超短絡的な考え方をしてしまいます。自分の願望(「戦いたい」)を正当化するため、都合よく目の前の事象を解釈していると言えます。一番やってはいけないことです。ヒルデスハイム伯爵のここでの最もあるべき姿は、自身の経験不足を素直に認め、事実を客観的に観察し、自身の短絡的な考えを批判的に再考する、ということでした。しかし、当時のゴールデンバウム朝貴族は、もっぱら「自分が絶対正しい」から思考がスタートしますので、自身の考えを批判的に見るなんて、そもそも不可能でした。残念ながら。

ビジネスの世界でも、これはよくあることだと思います。私自身もそうです。根拠のない自信というか、自分の知らない世界があることを「知らない」ということの恐ろしさに、気づいていない時代というものが、誰にもある、ということだと思います。(一言で言うと、「若気の至り」です)。

そして、もう一つの学びは、知りすぎると逆に判断できない、ということです。

シュターデン提督は、経験はそこそこで、艦隊戦の知識は豊富です(恐らく、帝国軍の中で一番だと思います)。そして、「(疾風ウォルフなのに)敵が動かない」→「何か策略がある(可能性が多すぎて決めきれない)」→「都合のよい通信が傍受できた」→「何か策略がある(やっぱり見極めきれない)」と、知識が豊富であることが逆に仇になり、選択肢が豊富に浮かびすぎて、決断できませんでした。最終決断ができたのは、皮肉にも、ヒルデスハイム伯爵が自身の浅はかな考えを押し付けてきたからです。

そう考えると、この二人、実はひとつ間違えると理想の組み合わせだったかもしれません。メルカッツ総司令官の副官シュナイダーは、彼らを「現実感覚に欠けるシュターデン提督と血気にはやるヒルデスハイム伯」と酷評していますが、もしシュターデンが理論重視であっても手堅い作戦案をいくつか立て切ることができて、ヒルデスハイムが実行を後押し出来ていたら、どうなっていたか。戦術面の巧拙がありすぎるため、貴族連合軍が勝ち切ることはなかったでしょうけど、もしかしたら善戦していたかもしれません。

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