しかしながら、イゼルローン要塞をヤンがあまりにも手際よく奪取してしまったことで、同盟側の民衆は、自身の軍事能力を過大評価することになってしまいます。つまり、「今なら帝国に勝てる」、と。誰でもネガティブな展望よりもポジティブなそれを望むものですので致し方ないのですが、自由惑星同盟にとって不幸だったのは、その感情を利用して保身や栄達を望む者が、政府および軍部にいたということだと思います。
その中の一人、というより中心人物だったのが、フォーク准将です。彼は、国民的英雄となったヤン・ウェンリーを上回る功績を立てる、というただそれだけの目的で、未曽有の行軍計画を立案し、私的なルートで保身を図る最高評議会議長(国家元首)に持ち掛けます。
結果として、最高評議会は、銀河帝国への大規模出兵を承認してしまいます。その出兵の作戦会議の場で、フォーク准将が示した作戦案が、「高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処することになろうかと思います」というものでした。
この言い回し、現代政治・ビジネスでもよく見かけます。政治屋(政治家ではなく)や「自称」コンサルタントといったような人が好んで使っています。発言の中身をよくよくかみ砕いていただくと分かると思いますが、実は「何も決めていない」ということを、綺麗な言葉で取り繕っているだけなのです。
フォークにとって、この出兵の目的は自身の栄達以外になかったため、作戦案自体も杜撰でした。ここでの学びは、「中身がないことを見抜くべし」ということだと思います。相手が言っていることに、どこまで本質があるか、それを見抜くことで、誰と共に歩むべきかを決めることができます。少なくとも、自由惑星同面はフォーク准将のような中身のない先導者に従ってしまい、この後、開闢以来の大敗を喫してしまうのでした。
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