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2021年4月4日日曜日

シドニー・シトレ「妙なものだ…トリューニヒトは我が世の春を謳歌している」(本伝第16話)

アムリッツァ星域会戦で惨敗した自由惑星同盟では、戦争に反対していた各人の境遇はそれぞれ異なるものでした。

最高評議会の国防委員長トリューニヒトは、戦争に賛成した議長に代わって、議長代理の座につきます。同じく反対していたジョアン・レベロ財務委員長とホワン・ルイ人的資源委員長は留任されますが、トリューニヒトほど優遇はされませんでした。

軍部では生き残ったヤン・ウェンリーとビュコックは大将に昇進し、それぞれイゼルローン要塞の司令官、宇宙艦隊総司令官職につきました。キャゼルヌは地方に左遷、そして、統合作戦本部長のシドニー・シトレは引責辞任することになりました。

こうして見ると、今回の戦いで最も利を得たのは、トリューニヒトということになります。TVショーでスポットライトを浴びるトリューニヒトの姿を見て、シトレがこうつぶやいた通りです。「妙なものだ。同じく戦争に反対していたのに、我々は軍を追われ、トリューニヒトは我が世の春を謳歌している」。

シドニー・シトレ「妙なものだ…トリューニヒトは我が世の春を謳歌している」(本伝第16話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第16話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

この差はどうして生じたのでしょうか。そこに今回の学びがあると思います。

結果論ですが、トリューニヒトは失敗するという結果まで読みきって、それを手段として利用する目的で反対し、シトレは本質的に反対した、というところの違いではないか、と思います。どちらの行動も学ぶことの多いものだと思います。

学びの一つは「起きたことは最大限利用する」ということです。トリューニヒトは様々な方面からの情報を踏まえ、フォーク准将に持ち込まれた今回の戦争が無謀であることは分かっていたように思います。そのため、ここで反対意見を投じる賭け(しかもかなり有利な賭け)をして、それに難なく勝った、ということなのだと思います。あまり好意的に評価される人物ではありませんが、このあたりの抜け目のなさは、学ぶところが多いです。

そして、もう一つは「自身のポリシーを貫く」ということです。シトレは持論に従い今回の戦いに反対を表明しました。そして、失敗後は潔く身を引いています。「自分はもともと反対だった」などと変に騒ぎ立てず、飛ぶ鳥後を濁さずに去っていきました。その結果、彼は後の軍部高官(ロックウェル大将など)や政治家達(トリューニヒト、レベロ達)が被る誹謗中傷とは無縁に生きることができたのだと思います。
※もっとも、ヤンの死後、身を引いたという自身の行動を本人は相当後悔していますが。

2021年2月23日火曜日

シドニー・シトレ「フォークが君をどう思っているかが大事なのだ」(本伝第12話)

シトレ元帥(元校長)の含蓄ある言葉が続きます。このシーンは学ぶことが多いです。

野心あふれるフォーク准将は軍の最高位に就くことを狙っていて、目下の強力過ぎる「ライバル」よりも優れた功績を残すことが必要でした。そこで、今回の(無謀すぎる)大遠征を企てたのですが、その「ライバル」が他ならぬ自分であることを、ヤンはシトレから告げられます。

「私にそんなつもりは…」と返すヤン。彼には、確かに全く出世欲はありません。この会議の少し前、イゼルローン要塞奪取に成功後、辞表を出して軍を辞めようとしていましたから。しかし、シトレは「君がどう思っているかではない。フォークが君をどう思っているのかが大事なのだ」と諭すのです。

シドニー・シトレ「君がどう思うかではない、フォークが君をどう思っているかが大事なのだ」(本伝第12話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第12話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっ ふ・サントリーより引用

ヤン自身は出世するつもりがなくても、相手はそうは思わない。フォークは自身の価値観で自分勝手に相手の像を作り上げてしまい、その相手を敵とみなして対抗しようとしていました。彼の常識では、出世を望まない軍人はいないのでしょう。しかしながら、これは、何もフォーク准将に特有の思い込みというわけではないと思います。現代社会でも、しばしば発生する事象ではないでしょうか。

また、人間は結局自分自身のことしか分からないわけですが、自分のことを頭が良いと思っている人ほど、相手のことが分かると勘違いする傾向にあるのではないか、と思います。

ここでの学びは、自分の常識は相手の非常識である可能性があること、そして自分の常識だけで相手の好意/敵意を測ることは非常に危険であること、この二つだと思います。

このフォーク准将の自分勝手な敵意は、かなり後になってからですが、銀河英雄伝説の最大の悲劇を生み出すことになります。

2021年2月22日月曜日

シドニー・シトレ「他者を貶めて、自分を偉く見せようとする」(本伝第12話)

自由惑星同盟軍は、銀河帝国に対する国家開闢以来の大攻勢を企図しますが、宿将達が集まった作戦会議の場で、フォーク准将の「行き当たりばったり」な作戦案を覆せる人は出てきませんでした。作戦案に異議を唱える発言を、フォークがあの手この手で封じてしまったため、誰もまともな発言をしなくなったからだと思います。

会議の後、その場に残っていたヤンに対し、統合作戦本部長シドニー・シトレは、フォーク准将のやり方に不満を表しながら、「他者を貶めて、自分を偉く見せようとする。しかし、自分が思っているほど才能などないのだ」とフォークを切り捨てます。

シドニー・シトレ「他者を貶めて、自分を偉く見せようとする。しかし、自分が思っているほど才能などないのだ」(本伝第12話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第12話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっ ふ・サントリーより引用

フォークのように、自身が努力するのではなく、誰かを貶めることで自分をより高く見せ、生き残ろうとする人間は、どこにでもいると思います。私の会社にも、そういった人がいます。一緒に仕事をしていると、「いつ自分が貶められる立場になるのか」と怖くなることがあります。特に、実力に比してプライドが高いタイプの人に、そういう傾向が見られるように思います。ここでの学びのひとつは、もちろん、相手を貶めるタイプからは距離を置く、ということです。

そして、もう一つの学びは、シトレの人を見抜く目と抜擢する手腕です。彼の人物評価は非常に鋭い。この後、彼は軍隊を引退しますが、もともとは士官学校の校長でした。そして、彼の校長時代には、ヤンやアッテンボロー、そして恐らくキャゼルヌといった、今後の自由惑星同盟軍を担うコアメンバーが士官学校を巣立っていきました。彼らを見出し、導き、そして引き上げた手腕は相当なものだと思います。思うに、シトレのような校長および上官がいたからこそ、(腐敗しつつあったものの)自由惑星同盟軍は異才に恵まれたのだと思います。そういう意味で、シトレの卓越した人物評は、学ぶことの多い題材だと思います。

2021年2月3日水曜日

シドニー・シトレ「君にできねば、誰にもできんだろう。」(本伝第3話)

アスターテ会戦後、ヤン・ウェンリーは第2艦隊を境地から救った功績が認められ、少将への昇進が決まります。そして、敗残兵と新兵の寄せ集めで、通常の艦隊の半分の規模となる第13艦隊の初代司令官に任命されることになりました。

第13艦隊の最初の仕事は、銀河帝国の難攻不落の要塞、イゼルローン要塞を落とすこと。イゼルローン要塞には、これまで何度となく攻略作戦が展開されましたが、一度も成功しませんでした。その鉄壁の要塞を、半個艦隊で落とすよう命じる際に、統合作戦本部長シドニー・シトレ元帥が使った殺し文句が、「君にできねば、誰にもできんだろう」というこの一言です。

シドニー・シトレ「君にできねば、誰にもできんだろう。」(本伝第3話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第3話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっ ふ・サントリーより引用

この言葉、非常に危険な言葉ではないでしょうか。これを敬愛する上司から言われると、ついつい乗せられてしまう、無理もしてしまう、そんな言葉だと思います。

シトレはかなり後になって(ヤンの死後、物語ではかなり終盤)、この言葉と共にヤンを国家の大事に巻き込んでしまったことについて、とても後悔しています。自分の言動により、若いヤンを巻き込んで死なせておきながら、自身は引退生活に入ってしまっていましたから。

そういう意味で、この言葉は人生の中で極力使うべきではない言葉ではないか、と思います。

注)ヤン自体は、シトレのこの言葉があったからイゼルローン攻略を引き受けたわけではなく、自信があったからだと思います。勝算がない戦いはしない人だと思いますので。

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