2021年1月31日日曜日

ヤン・ウェンリー「ここまでが精いっぱいだよ。これ以上戦うのは無理だ」(本伝第2話)

アスターテ会戦は、同盟軍の当初の作戦プランの稚拙さにパエッタ中将の判断ミス等が重なり、全滅の可能性すらありました。その危機を救ったのは、重傷を負ったパエッタの後を任された作戦参謀のヤン・ウェンリー准将です。

ヤンは劣勢を覆し、ラインハルトの帝国軍艦隊の背後に回ることに成功し、戦局は消耗戦に突入していきました。事態を正確に把握したラインハルトが撤退行動に移った際、追撃の是非を問うたアッテンボロー(包帯を巻いた人物。ヤンの士官学校時代の後輩)に対し、ヤンが返した言葉が「ここまでが精いっぱいだよ」でした。

ヤン・ウェンリー「ここまでが精いっぱいだよ。これ以上戦うのは無理だ」(本伝第2話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第2話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっ ふ・サントリーより引用

功績を第一に考える職業軍人であれば、劣勢を覆した後に敵が撤退を始めれば、より功績を立てるために追撃を考えるでしょう。しかし、ヤンはそうしませんでした。自身のその時の職責がパエッタからの代理にすぎないこと、この時点における同盟軍の戦力・物資や士気、そして当初から「消耗戦に持ち込めれば、引き分けで終了」との目標を(おそらく)置いていたため、深追いをしなかったと考えられます。

この一言からの学びは、身の丈にあった目標を立て、達成後は欲張らない、という姿勢だと思います。つい功名心や射幸心から「あともう少し」となってしまいがちですが、そこは自制心をもって、確実にひとつひとつ目標をクリアしていくことが、その後の栄達に繋がっていくのだと思います。

パエッタ中将「不明な以上、望みはある」(本伝第1話)

ラインハルトとは逆に、反面教師にすべき一言が、自由惑星同盟軍第2艦隊司令官パエッタのこの一言です。

先に述べたように、アスターテ会戦で、自由惑星同盟は2倍の艦隊(40000隻)で帝国軍を3方向から包囲殲滅しようとしており、圧倒的有利なはずでした。しかしながら、戦争の天才ラインハルトにより、3つに分けた艦隊(第2艦隊、第4艦隊、第6艦隊)のひとつ、第4艦隊が急襲され連絡も途絶してしまいます。

この時点では、まだ同盟軍の有利は覆ってはいません。第4艦隊(13000隻)を失っても、数の上では27000隻 対 20000隻。五分以上です。そして、それは同盟軍の幕僚、ヤン・ウェンリーからも指摘されていました。今、第4艦隊を見捨てて第2・第6艦隊が合流すれば、勝てる。しかしながら、パエッタは判断を誤り、持ちこたえているかどうか不明な第4艦隊の救援に向かってしまいます。そして、同盟軍は惨敗するのでした。

パエッタ中将「不明な以上、望みはある」(本伝第1話)

『銀河英雄伝説』DVD 本伝第1話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっ ふ・サントリーより引用

このケースは、根拠のない楽観論が身を亡ぼす典型だと思います。2倍近くの敵に奇襲されても、持ちこたえてくれているだろう、連絡はないが、だからこそ負けているとは限らない、という、文字にして客観的に見ると極めて可能性の低い方に賭けてしまったことが分かります。しかも、第三者(この場合、ヤン・ウェンリー)から、適切な助言を受けているにもかかわらず、です。

ここから学ぶべきことは、遭遇したことのない場面に出くわして判断に迷う場合、自分が近視眼的な思考に陥っている可能性をまず考えないといけない。一度状況を客観的に俯瞰して、過去の常識を忘れないと、判断を誤るかもしれない。そして、自分を俯瞰してみてもらえる助言者という存在がとても大事だ、ということだと思います。

ラインハルト・フォン・ローエングラム「我々が敵より圧倒的に有利な態勢にあるからだ」(本伝第1話)

序盤でまず学びになる一言は、これだと思います。

舞台は未来の人類社会。専制君主制の銀河帝国ゴールデンバウム王朝と、民主主義国家の自由惑星同盟が数百年に渡る戦争状態にある中、銀河帝国の若き天才ラインハルト・フォン・ローエングラムは敵のわずか半数の艦隊(20000隻)で戦わなければなりませんでした。敵は40000隻の艦隊を3つに分け、3方向からラインハルトの艦隊を包囲殲滅することを狙っていました(アスターテ会戦)。

その戦いに先駆けた作戦会議で、ラインハルトが放った一言が、これです。2倍の艦隊に3方向から迫られる中、「常識」から考えて圧倒的不利だと主張した部下に対し、自分たちは「圧倒的有利な立場にある」と反論しました。

ラインハルト・フォン・ローエングラム「我々が敵より圧倒的に有利な態勢にあるからだ」(本伝第1話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第1話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっ ふ・サントリーより引用

20000隻 対 40000隻。合計数だけ見ると、確かに圧倒的不利です。しかし、敵は40000隻を3つに分けているため、一つの集団と個別に戦っていけば、20000隻 対 13000隻。逆に倍近い兵力で戦える。そのため、自信をもって「圧倒的有利」と言い切ったのです。結果は、ラインハルトの銀河帝国の圧勝となりました。

ここから得る学びは、常識を疑え、に尽きると思います。「これまでがそうだったから、これからもそうだ」という考え方で、ある程度切り抜けられた時代(高度成長期やバブル崩壊後の日本)は、もう存在しません。これからは常識自体をイノベーションで変えていく時代ですので、生き残るためには、ラインハルトのような発想の転換が必要になってくると思います。

注目の投稿

ルパート・ケッセルリンク「未来の原因としての現在をより大切にすべきでしょうな」(本伝第34話)

総司令官ヤン・ウェンリーの査問中に、留守となったイゼルローン要塞を狙われた自由惑星同盟。無事に撃退はできたものの、査問を持ち掛けてきたフェザーンに対して、当然不信感を募らせていました。 フェザーン駐在の自由惑星同盟高等弁務官ヘンスロー は、 自治領主の首席秘書官ルパート・ケッセル...

人気の投稿