ラベル フレーゲル の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル フレーゲル の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2021年8月9日月曜日

レオポルト・シューマッハ「そういう寝言を言っているから戦に負けるのです!もう沢山です!」(本伝第23話)

ブラウンシュヴァイク公爵によるヴェスターラントへの核攻撃は、自身が率いるリップシュタット連合軍を更に追い込んでいきます。ほぼ全ての植民星が離反し、ガイエスブルク要塞は完全に孤立してしまいます。敗北必至の現実から逃避すべく、大貴族達は連日無意味な宴会に身を投じていました。

そして、本来は持久戦に持ち込んで遠路遥々遠征に来ているローエングラム侯ラインハルトの軍の疲弊を待つべきところ、ヒロイックな美学に取りつかれたフレーゲル男爵以下現実感覚のない貴族達は、総大将のブラウンシュヴァイク公爵をも巻き込んで、華々しい玉砕をするために出撃していったのでした。

この出撃に巻き込まれた損な役回りが、前述のメルカッツ提督とシュナイダー少佐の主従コンビと、フレーゲル男爵の副官シューマッハ大佐です。

シューマッハ大佐は後方勤務がメインでしたが、貴族最優先の帝国軍の中で、平民でありながら着実に出世していった非常に有能な参謀でした。また、非常に忍耐強く、上官の無茶な命令にも黙々と従う、そんなタイプだったと思います。その彼が、上官たるフレーゲル男爵が「滅びの美学」を完成させるため、帝国軍の宿将達に戦艦の一騎打ちをしかけようと騒ぎ出した際に、堪忍袋の緒が切れて言い放ったのが、この言葉でした。

「滅びの美学ですって!そういう寝言を言っているから戦に負けるのです!もう沢山です!やりたかったら一人でおやりなさい!」

レオポルト・シューマッハ「そういう寝言を言っているから戦に負けるのです!もう沢山です!」(本伝第23話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第23話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

このように自身を否定する言葉を、生まれて初めて浴びせられ、フレーゲル男爵は一瞬動きが止まります。そして、時間差でこみ上げる怒りと共にブラスターを取り出そうとした刹那、フレーゲルは自分の部下達に一斉に狙撃され、命を落としました。恐らく、このやり取りを周りで見ていた部下達は、シューマッハの言葉を心の底から待っていたのだと思います。

ここでの学びは、きっかけ一つで周囲の行動が変わる、という点です。

この時点まで、貴族に平民がたてつくことは、常識としてあり得ない世界だったと思います。そのため、フレーゲルはシューマッハの言葉を瞬時には理解できませんでした。(そして、その時間がフレーゲルを死なせ、シューマッハを生き延びらせるのに必要な時間でした)。

しかし、リップシュタット連合軍の度重なる敗退、ヴェスターラントの虐殺、帝国全土における反貴族の趨勢、そういった時代の変化は、リップシュタット連合軍側の兵士達にもひしひしと感じられたと思います。そこに投げかけられた、フレーゲル男爵という大貴族の権化へのシューマッハの言葉が、フレーゲルを撃った部下達の行動を促すトリガーになりました。

このように、流れが出来上がりつつある中で、きっかけ一つで潮目が変わることは、現代社会の中でも少なくないと思います。ビジネスでも、ある一言がきっかけで、協力者が増えるということがあります。気が付いたら流れが自分に向いていて、無意識に発した言葉が相手のスイートスポットに刺さっていることもあります。

ここで注意すべきは、シューマッハという人が、言動一致せず周囲の信頼のない人物だったら、部下達は彼を救わなかったであろうということです。常に行動が伴う人による言葉であることが、周囲の行動を変えるトリガーとしては重要なファクターではないか、と思います。

2021年7月14日水曜日

ブラウンシュヴァイク公爵「これは賞すべき行いであると認める」(本伝第22話)

リップシュタット連合軍の総司令官メルカッツが(あまり重要拠点ではない)シャンタウ星域でローエングラム侯爵の軍を退けたことは、貴族連合軍に思わぬ効果をもたらしていました。士気が制御不可能なレベルにまで上がり、出撃すれば必ず勝てるという妄想が広がっていました。

つまり、彼らは「自分たちが強い」と、誤解してしまったのです。これはシャンタウ星域を放棄したロイエンタールには想定しえなかった効果でしたが、ローエングラム侯爵ラインハルトや参謀オーベルシュタインにとっては予定通りの状況でした。

そんな中、リップシュタット連合軍の本拠地ガイエスブルク要塞に、先の戦いでシュターデン提督を破った疾風ウォルフガング・ミッターマイヤー提督が仕掛けてきます。彼は、要塞主砲の射程ギリギリのラインで示威行動を取っていました。ここに、連合軍の意気上がる貴族達が食いつきます。メルカッツが制止したにも関わらず、フレーゲル男爵(総大将ブラウンシュヴァイク公爵の甥)とそれに呼応した貴族達が、勝手に出撃してしまいます。

…そして、これまたメルカッツの一番嫌な結果に終わります。つまり、彼らはまた勝ってしまったのです。ミッターマイヤーは、フレーゲル男爵の軍勢を見るや否や、一目散に逃げだしてしまったのです。そして、貴族連合軍は、さらに「自分達は強い」という妄想を強めることになります。それがラインハルトとオーベルシュタインによって作り出された幻想であることを知らずに。

フレーゲル男爵たちは意気揚々と凱旋しますが、そこに待っていたのは、メルカッツの厳しい追及でした。「軍法会議も覚悟せよ!」。総司令官の指令に背いたのですから、通例の軍隊では、当たり前の処罰です。しかし、ここは規律ある軍隊ではなく、貴族の花園でした。総大将たるブラウンシュヴァイク公爵は、彼らを貴族であるからという理由で許したのです。「これは賞すべき行いであると認める」。その一言に、メルカッツがげんなりしたことは言うまでもありません。

こうして、リップシュタット連合軍は、「何をやっても許される」というなんの統制も効かない状況の下、奈落の底へと突き進んでいくことになるのです。

ブラウンシュヴァイク公爵「これは賞すべき行いであると認める」(本伝第22話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第22話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

ここでの学びは、トップが規律を破ってはいけない、という点です。

ブラウンシュヴァイク公爵は帝国の大多数の貴族が集積する連合軍の総大将でした。また、自身の戦争スキルの不足を補完するため、メルカッツを総司令官として招聘しました。メルカッツの下で軍規が守られることが、この戦いに勝つための最低限の条件であるはずでした。

しかし、ブラウンシュヴァイク公爵は、甥であるフレーゲル男爵の軍規違反を咎めることができませんでした。というより、咎める必要性を恐らく感じなかったのだろうと思います。そこに、彼の将としての見通しの甘さが表れています。身内を優先して「あるべき姿」を捻じ曲げてしまったこと、そして、身内の軍規違反をこともあろうか「賞すべき行い」としてしまったこと、このことは、何があるべきで、何があるべきでないか、その価値観を180度真逆にしてしまったのだと思います。

一度こういう前例ができてしまうと、メルカッツなど本当に艦隊戦に通じている将帥たちのどんな正論も慎重論も、貴族達には通じなくなります。これが、ローエングラム侯爵ラインハルトとオーベルシュタインが描いた貴族連合軍の内部崩壊シナリオでした。貴族連合軍は、見事に「警戒すべき少数の将帥」と「烏合の衆」の2つに分断されてしまったのです。引き金は、ブラウンシュヴァイク公爵の不用意な一言、「これは賞すべき行いであると認める」だったことは疑いありません。

しかし、もしブラウンシュヴァイク公爵がもう少し将として器があり、フレーゲル男爵を罰していたら、どうなっていたでしょうか。リッテンハイム侯爵により全軍の3分の1を無為に失っていたとは言え、まだ10万隻近くがリップシュタット連合軍には残っていました。その大軍をメルカッツや後の帝国軍の中枢となるファーレンハイトがきっちり率いられていたら、それほど早くこの戦役が終わることはなかったと思います。そして、戦役が長引くということは、クーデターが収束した自由惑星同盟により帝国侵攻の可能性を高めることになり、それはローエングラム侯爵ラインハルトにとっては、極めて都合の悪い事態でした。つまり、貴族連合軍による逆転トライは十分ありえたと言えます。

そういう意味で、この場面は、トップの発言がいかに組織にとって大きな意味があるのか、そのことを反面教師で学ぶ良い機会になったと思います。

2021年2月19日金曜日

フレーゲル男爵「太陽が沈まぬうちに、沈むことのないよう手を打っておくものだ」(本伝第11話)

銀河英雄伝説では、銀河帝国の門閥貴族たちはラインハルトとキルヒアイスの敵役として描かれ、必ずしも好意的な役回りを与えられていません。しかしながら、たまに人生を生きる上で有益なことを言う人がいます。この第11話で影の主役となるフレーゲル男爵もその一人です。

この回では、現在の皇帝の愛妾、グリューネワルト伯爵夫人(ラインハルトの姉アンネローゼ)と、かつての愛妾ベーネミュンデ侯爵夫人の争いが描かれています。フレーゲル男爵は、侯爵夫人を操ってアンネローゼおよびラインハルトを表舞台から消し去ろうと企てます。

フレーゲルはベーネミュンデ侯爵夫人に「あの女がいなくなれば、皇帝陛下は再びあなたのものになる」という主旨の言葉をささやくのですが、その言葉は皇帝陛下の寵愛をなんとしても取り返したい侯爵夫人の心をしっかり捉えることに成功しました。フレーゲルは侯爵夫人にとって、希望を叶える救世主になったのです。

ベーネミュンデ侯爵夫人を傀儡化した帰り道で、フレーゲルが部下に呟いた言葉が、「太陽が沈まぬうちに、沈むことのないよう手を打っておくものだ。このようにな」です。ベーネミュンデ侯爵夫人を「一度沈んだ太陽が、再び上ると思っている」と評した後に、今後の災いを消し去ろうとしている自身の抜け目なさとを比較して発した言葉です。

フレーゲル男爵「太陽が沈まぬうちに、沈むことのないよう手を打っておくものだ」(第11話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第11話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっ ふ・サントリーより引用

敵役のフレーゲル男爵が発言すると少し陰鬱でネガティブな印象を与える言葉になってしまいますが、非常に含蓄ある言葉だと思います。学びは「余力のあるうちに次に備える」ということです。それが、ビジネスでも人間関係でも、長続きする秘訣なのではと思います。

注目の投稿

ルパート・ケッセルリンク「未来の原因としての現在をより大切にすべきでしょうな」(本伝第34話)

総司令官ヤン・ウェンリーの査問中に、留守となったイゼルローン要塞を狙われた自由惑星同盟。無事に撃退はできたものの、査問を持ち掛けてきたフェザーンに対して、当然不信感を募らせていました。 フェザーン駐在の自由惑星同盟高等弁務官ヘンスロー は、 自治領主の首席秘書官ルパート・ケッセル...

人気の投稿