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2021年5月4日火曜日

クブルスリー大将「私の権限は手順を守らせるためにあるのであって、破らせるためにあるのではない」(本伝第19話)

銀河帝国で皇帝崩御に伴う大規模な内戦が勃発しようとしている頃、自由惑星同盟ではラインハルトが送り込んだスパイ、アーサー・リンチ元同盟軍少将によるクーデター計画が着々と進められていました。

その作戦の手始めとして狙われたのが、シドニー・シトレ元帥の後任となったクブルスリー統合作戦本部長です。宇宙艦隊司令長官となったビュコック大将が「分かった人物」と評したように、華々しい武勲はないものの、まともな人物だったと思います。

そのクブルスリー大将の前に現れたのが、アムリッツァ星域会戦の作戦を立案したフォーク准将です。フォークは病気療養中でしたが、軍への早期復帰をクブルスリーに願い出ます。そのフォークに対するクブルスリーのカッコいい返答が、「私の権限は手順を守らせるためにあるのであって、破らせるためにあるのではない」です。ここまでは良かった。

クブルスリー大将「私の権限は手順を守らせるためにあるのであって、破らせるためにあるのではない」(本伝第19話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第19話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

問題はこの後です。実は、フォークのこの申し入れは、擬態でした。彼の真の目的は、クブルスリーの暗殺です。断られた直後、フォークはブラスター(拳銃)を抜き、クブルスリーを撃ちます。クブルスリーは死亡しませんでしたが、重傷を負い、表舞台から去っていくことになりました。

今回の一つ目の学びは、権限のあるべき姿をリーダーが守る、という点です。クブルスリーのこの言葉は全くその通りですが、世の中のリーダーは、実は自分から手順を破っていることが多いのではないでしょうか。アムリッツァ星域会戦の作戦案が評議会を通ったのも、自由惑星同盟のリーダーたる評議会議長が手順を無視したからです。ビジネスの世界でも、自分は手順を破るのに、部下には押し付ける人がいます。また、自分も部下にも手順破りを容認している人さえいます。そんな世の中で、クブルスリーのこの一言は、非常にまともで価値のある一言だったと思います。

もう一つの学びは、リーダーはリスクを最大限気にするべし、という点です。ここの場面、脇が甘いとしか言えないことが満載なことにお気づきでしょうか。フォーク准将は病気療養中のため、そもそも統合作戦本部に入場する権限はなかったと思われます。しかし、彼は簡単に中に入り、しかも統合作戦本部長と直接会話できてしまっています。リスク管理をしっかりしていれば、そんな場面は起こりえなかったはずです。また、クブルスリーを守るはずのSP達は、守るどころか遠巻きに事の次第を見守っています。クブルスリー自身も、フォークの登場を全く不審に感じることなく受け入れ、しかも説教することに集中しすぎてブラスターを抜かれるまで行動できませんでした。

クブルスリー本人というより、自由惑星同盟の軍部自体が緩んでいたのだと思いますが(また、そこにうまく付け込んだクーデター側のファインプレイとも言えますが)、リーダーと取り巻きがこんな杜撰なリスク管理をしていると、敵の思う壺に簡単に嵌ってしまう、本件はその好例だと思います。

2021年3月12日金曜日

アレクサンドル・ビュコック「他人に命令するようなことが自分にはできるかどうか、やってみたらどうだ」(本伝第14話)

前線に補給物資を届けるはずの輸送船団が、帝国軍に殲滅させられてしまい、物資が枯渇した占領地は窮地に立たされます。自分たちが食べる物も徐々に尽きていく中、ヤン・ウェンリーとウランフ、そしてビュコックら、まともな判断力をもつ提督達は、作戦本部に撤退を申し入れます。このままの状態で帝国軍に急襲されれば、ほぼ確実に敗北するからです。

しかしながら、作戦参謀のフォーク准将は、「私なら撤退などしません」と、彼らの申し入れを一蹴します。実戦経験のないフォーク准将は、前線から離れていたこともあり、状況の切迫度が理解できませんでした。そして、この一言は歴戦の将ビュコックの堪忍袋を切ることになります。

「他人に命令するようなことが自分にはできるかどうか、やってみたらどうだ!」

ビュコック「他人に命令するようなことが自分にはできるかどうか、やってみたらどうだ」(本伝第14話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第14話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっ ふ・サントリーより引用

ここでの学びは、自分にできないことができる存在に対する敬意(リスペクト)の必要性、だと思います。フォーク准将は自身の経験不足を自覚しようとせず、経験豊富な前線の意見を一蹴しました。その結果、同盟軍は多く兵士の命と有能な将軍を失ってしまい、亡国への道を突き進むことになります。

極論すると、ここでフォーク准将が判断を誤ったことが、自由惑星同盟という民主主義国家の滅亡のきっかけになったとも言えます。※これだけが原因ではなく、フォークのようなイケてない存在が、遠征軍の作戦参謀という極めて重要な役割に就けてしまう世の中になってしまったこと、そのこと自体、問題なのだと思います。

また、このシーンを見た多くの方が、フォーク准将に対しネガティブな印象を受けたと思います。彼の振る舞いは、ジェシカに「(戦争を賛美する)あなたはどこにいます?」と問いかけられ、回答に窮したトリューニヒトと同様に、口先だけで行動をしない人間、そして他人を平気で死地に陥れる人間がいかに醜く見えるか、ということを象徴的に表していると思います。

もちろん、ビジネスの世界でも同様です。ただ、難しいのは、口先だけの人間は得てして、自分のことを「有言実行の人間」だと相手に思い込ませるのが得意だ、という点です。相対する側に、見抜く力が備わっていないといけません。

2021年2月20日土曜日

アンドリュー・フォーク「高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処することになろうかと思います」(本伝第12話)

イゼルローン要塞陥落後、ヤンを含む軍部の良識派メンバーは、戦争がひと段落すると考えていました。難攻不落の要塞を奪取したことで、銀河帝国側が手詰まりとなり、自由惑星同盟側に有利な講和条約を結ぶ可能性が出てきたためです。

しかしながら、イゼルローン要塞をヤンがあまりにも手際よく奪取してしまったことで、同盟側の民衆は、自身の軍事能力を過大評価することになってしまいます。つまり、「今なら帝国に勝てる」、と。誰でもネガティブな展望よりもポジティブなそれを望むものですので致し方ないのですが、自由惑星同盟にとって不幸だったのは、その感情を利用して保身や栄達を望む者が、政府および軍部にいたということだと思います。

その中の一人、というより中心人物だったのが、フォーク准将です。彼は、国民的英雄となったヤン・ウェンリーを上回る功績を立てる、というただそれだけの目的で、未曽有の行軍計画を立案し、私的なルートで保身を図る最高評議会議長(国家元首)に持ち掛けます。

結果として、最高評議会は、銀河帝国への大規模出兵を承認してしまいます。その出兵の作戦会議の場で、フォーク准将が示した作戦案が、「高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処することになろうかと思います」というものでした。

アンドリュー・フォーク「高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処することになろうかと思います」(本伝第12話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第12話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっ ふ・サントリーより引用

この言い回し、現代政治・ビジネスでもよく見かけます。政治屋(政治家ではなく)や「自称」コンサルタントといったような人が好んで使っています。発言の中身をよくよくかみ砕いていただくと分かると思いますが、実は「何も決めていない」ということを、綺麗な言葉で取り繕っているだけなのです。

フォークにとって、この出兵の目的は自身の栄達以外になかったため、作戦案自体も杜撰でした。ここでの学びは、「中身がないことを見抜くべし」ということだと思います。相手が言っていることに、どこまで本質があるか、それを見抜くことで、誰と共に歩むべきかを決めることができます。少なくとも、自由惑星同面はフォーク准将のような中身のない先導者に従ってしまい、この後、開闢以来の大敗を喫してしまうのでした。

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