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2021年4月21日水曜日

エルネスト・メックリンガー「一頭の獅子に率いられた羊の群れは、一頭の羊に率いられる獅子の群れを駆逐するという」(本伝第18話)

反皇帝派(というより、反ラインハルト派)の門閥貴族達が、ブラウンシュヴァイク公爵を当主とする連合(リップシュタット連合軍)を組むという報告が、参謀長オーベルシュタインによってラインハルトの下に届けられます。

もともと門閥貴族達の兵力はラインハルトの兵力をかなり上回っていましたが、烏合の衆であるため、取るに足らないと考えられていました。しかしながら、貴族連合軍総司令官の名前を知った艦隊司令官達は、耳を疑います。なぜならば、貴族連合軍の総司令官は、ラインハルトの実力を認めているはずの老練な提督、ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ上級大将だったからです。

後年、帝国軍の宇宙艦隊総司令官となるミッターマイヤーとロイエンタールは、「この銀河で対等に戦えるのは、宰相閣下(ラインハルト)とヤン・ウェンリーとメルカッツだけ」と言っているだけに、その手腕は相当なものでした。

事の重大さを認識していないビッテンフェルトが「いかにメルカッツが率いるといっても、所詮烏合の衆だ」とキャラ通りに息巻きますが、芸術家提督メックリンガーが自身の役割を承知しているかのようにこう諭します。

一頭の獅子に率いられた羊の群れは、一頭の羊に率いられる獅子の群れを駆逐するという。油断はせぬことだ」。

エルネスト・メックリンガー「一頭の獅子に率いられた羊の群れは、一頭の羊に率いられる獅子の群れを駆逐するという」(本伝第18話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第18話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

このメックリンガーの一言は、チームプレイにおける真理をついていると思います。いわゆるリーダーシップの重要性です。

リーダーの交代が組織のパフォーマンスを劇的に変えることは、歴史の世界でもビジネスの世界でも、様々なところで証明されていると思います。スポーツでは監督やキャプテンの影響が非常に大きく、国家では元首のリーダーシップが国の行く末を左右します。能力の高いプレイヤーばかり集めてもうまくいかないのは、リーダーが不在か凡才だからだと思います。

少しこの場面とは違いますが、銀河英雄伝説の中でリーダーシップがうまく取れているのは、ラインハルト旗下の帝国軍ヤン・ウェンリーのヤン艦隊(イゼルローン駐留軍)(外伝の)ブルース・アッシュビー率いる730年マフィア、そして総大主教を頂点とする地球教といったところですが、それぞれリーダー像が異なるのが面白いところです。逆に、皇帝フリードリヒ4世同盟軍最後の国家元首ジョアン・レベロ、そしてフェザーン最後の自治領主ルビンスキーは、いまいちうまくリーダーシップを発揮できなかった例だと思います。このあたりのリーダーシップ像の違いは、それぞれの場面が出てきた際に考察してみたいと思います。

2021年3月27日土曜日

フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト「わが艦隊に退却の文字はない」(本伝第16話)

銀河帝国領に奥深く侵攻していた自由惑星同盟軍は戦力分散の愚を悟り、最終決戦の場であるアムリッツァ星系に集結します。しかし、集結すると言っても集まった艦隊は、8艦隊中わずかに3艦隊。最終決戦でも、銀河帝国軍が倍以上の兵力をもって自由惑星同盟軍を挟撃し、ここに大勢は決しました。

退却戦の中で、ヤン・ウェンリー率いる第13艦隊は同盟軍主力を離脱させるべく、しんがりを務めることになります。彼には逃げ切れる目算がありました。帝国軍の包囲網の中で、一部分だけ防御の脆い部分があったからです。それは、第10艦隊のウランフ提督を敗死させたビッテンフェルト提督の艦隊でした。

ビッテンフェルト艦隊は非常に好戦的で、攻撃には無類の強さを発揮しますが、防御は不得意な性格でした。また、挟撃体制が完成する前に、第13艦隊から集中砲火を受けており、かなり消耗していました。そこをヤンの第13艦隊が突破し、難なく逃げることに成功したのです。ビッテンフェルトは「わが艦隊に退却の文字はない」という名言(?)を叫びながら応戦しましたが、全く相手になりませんでした。

フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト「わが艦隊に退却の文字はない」(第16話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第16話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっ ふ・サントリーより引用

ここでの学びは、適材適所が肝要、という点です。ビッテンフェルトの独特の性格、攻撃面は最強だが防衛面は脆い、というキャラクターは、帝国軍の誰もが知っている事実でした。そこにケアをしなかったのは、帝国軍、および総司令官ラインハルトの落ち度だと思います。特に、同盟軍を包囲殲滅する際に重要となる中央付近の防衛線に、傷ついた彼の艦隊を配置したのは、大失敗と言わざるを得ません。参謀長オーベルシュタインが途中で気づき、キルヒアイスに援護させましたが、時すでに遅し、でした。

ですが、学びとして重要なのはそこではありません。このアムリッツァ星域会戦以降、ラインハルトはビッテンフェルトの用い方を変えます。ここまでの戦いでは、他の提督と同様に通常戦力の一部としてビッテンフェルト艦隊は用いられていましたが、この戦いの後、先鋒か、あるいはトドメを刺す役回りか、どちらかに特化した用い方がされるようになります。それは、彼の性格を十二分に生かした任用だと言えるでしょう。

2021年3月14日日曜日

ウランフ「傷ついた味方艦を一隻でも多く逃がすんだ」(本伝第15話)

ヤンがケンプ艦隊からの逃亡に成功した頃、帝国軍艦隊で最も好戦的なビッテンフェルト提督と遭遇していたのが、ウランフ提督の第10艦隊でした。ウランフもヤンと同様、補給路を断たれたことによる同盟軍の不利に気づいていましたので、撤退準備もしていたし、食料はセーブ気味に消費していたはずです。しかしながら、こちらは同盟軍よりも帝国軍の方が数で上回るという状況でした。そのため、戦況は五分五分だったものの、徐々にウランフ艦隊の方が押され始めます。

ここで、第10艦隊参謀長のチェンが冷静な判断のもと、二つの選択肢をウランフに提示します。すなわち、降伏か、逃亡か、です。ウランフは「降伏は性に合わん。逃げるとしよう」ということで、ヤンと同様に逃亡を選択しますが、既にビッテンフェルトに全包囲されていましたので、彼らには紡錘陣形による中央突破しか手段がありませんでした。

ウランフは自身の旗艦がしんがりを務める判断を下します。傷ついた味方艦を一隻でも多く逃がすんだ」。彼の勇戦の結果、全体の5割は逃亡に成功、後にヤンの第13艦隊と合流し、自由惑星同盟最後の希望になるのですが、残念ながらウランフ自体はここで戦死してしまいました。
ウランフ「傷ついた味方艦を一隻でも多く逃がすんだ」(本伝第15話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第15話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっ ふ・サントリーより引用

ここでの学びの一つは、責任を全うする上官には良い部下がつく、ということだと思います。第10艦隊は非常に優秀な艦隊で、この戦いでも不利な状況にも関わらず善戦しますし、彼らのひとつ前の戦い(第3次ティアマト会戦)でも、ラインハルトをして「同盟軍にもできる奴がいる」と言わせる戦いぶりでした。それらはおそらく、艦隊司令官ウランフの人柄と責任感(この人は部下を見捨てないという信頼)によるところが大きいと思います。これはチームを率いる仕事全てに言えることではないでしょうか。

もう一つの学びは、逆に、司令官は本来格好悪くても生き残らないといけない、ということです。ここでウランフが戦死したことは、同盟軍にとって痛手でした。なぜなら、この戦い(アムリッツァ星域会戦)で、当時の11人の艦隊司令官のうち、なんと6人も失うことになるからです。生き残った司令官職のメンバーで、実戦でラインハルトの精鋭とまともに戦えるのは、ヤン、ビュコックの2人くらいになってしまいました(残り3人は、クブルスリー、パエッタ、ルグランジュ)。そのため、ここで名誉の戦死をするのではなく、ギリギリのところでシャトルに乗って逃げ出していてほしかった、と個人的には考えてしまいます。

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