2021年3月27日土曜日

フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト「わが艦隊に退却の文字はない」(本伝第16話)

銀河帝国領に奥深く侵攻していた自由惑星同盟軍は戦力分散の愚を悟り、最終決戦の場であるアムリッツァ星系に集結します。しかし、集結すると言っても集まった艦隊は、8艦隊中わずかに3艦隊。最終決戦でも、銀河帝国軍が倍以上の兵力をもって自由惑星同盟軍を挟撃し、ここに大勢は決しました。

退却戦の中で、ヤン・ウェンリー率いる第13艦隊は同盟軍主力を離脱させるべく、しんがりを務めることになります。彼には逃げ切れる目算がありました。帝国軍の包囲網の中で、一部分だけ防御の脆い部分があったからです。それは、第10艦隊のウランフ提督を敗死させたビッテンフェルト提督の艦隊でした。

ビッテンフェルト艦隊は非常に好戦的で、攻撃には無類の強さを発揮しますが、防御は不得意な性格でした。また、挟撃体制が完成する前に、第13艦隊から集中砲火を受けており、かなり消耗していました。そこをヤンの第13艦隊が突破し、難なく逃げることに成功したのです。ビッテンフェルトは「わが艦隊に退却の文字はない」という名言(?)を叫びながら応戦しましたが、全く相手になりませんでした。

フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト「わが艦隊に退却の文字はない」(第16話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第16話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっ ふ・サントリーより引用

ここでの学びは、適材適所が肝要、という点です。ビッテンフェルトの独特の性格、攻撃面は最強だが防衛面は脆い、というキャラクターは、帝国軍の誰もが知っている事実でした。そこにケアをしなかったのは、帝国軍、および総司令官ラインハルトの落ち度だと思います。特に、同盟軍を包囲殲滅する際に重要となる中央付近の防衛線に、傷ついた彼の艦隊を配置したのは、大失敗と言わざるを得ません。参謀長オーベルシュタインが途中で気づき、キルヒアイスに援護させましたが、時すでに遅し、でした。

ですが、学びとして重要なのはそこではありません。このアムリッツァ星域会戦以降、ラインハルトはビッテンフェルトの用い方を変えます。ここまでの戦いでは、他の提督と同様に通常戦力の一部としてビッテンフェルト艦隊は用いられていましたが、この戦いの後、先鋒か、あるいはトドメを刺す役回りか、どちらかに特化した用い方がされるようになります。それは、彼の性格を十二分に生かした任用だと言えるでしょう。

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