そこに、アスターテ会戦で婚約者を失ったジェシカ・エドワーズ(ヤン・ウェンリーとは親友)が演台の近くまで歩き出て、トリューニヒトにこう話しかけます。「あなたはどこにいます?戦争を賛美するあなたはどこにいます?あなたのご家族は?あなたの演説はもっともらしいけど、あなた自身はそれを実行しているの?」
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第3話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっ ふ・サントリーより引用
このシーンをアニメで初めて見たのは高校生くらいだったと思いますが、強烈な印象が残っています。トリューニヒトはどの時代でもどこの世界にもいる「無責任政治屋」の生きた見本のような男ですが、その彼の痛いところをジェシカは公衆の面前で突きつけました。ヤン・ウェンリーがこの同じ第3話の中で、ジェシカに「誰かが言わなければならないことだったんだ」と言っているとおりです。
より悩ましいのは、こういう本質的な問題の場合、言われる側の方が、言う側よりはるかに強いことがある、ということです。国家権力や社会の権力者に対して意見を言うことは、現代では某専制国家のような国でない限り、命を取られるまではいきませんが、近代以前の時代では、命をかける必要がある行動だったと思います。実際、この後、ジェシカはトリューニヒトのお抱え治安維持部隊「憂国騎士団」に襲われることになります。
また、国レベルの話に限らず、ビジネスの世界でも、人をそそのかしておきながら、自分は決して危険な場所に降りてこないトリューニヒトのような人がたくさんいます。そういう人々に対して、真っ向から戦うのか、無視して自らの職務に集中するのか、それとも迎合するのか、選択肢はたくさんありますが、ジェシカのこのシーンを思い出すと、つくづく悔いのない選択をしたいと思います。(もっとも、私自身は、ジェシカのように真っ向から戦いたいと思うものの、実際にその立場になったらできないだろうな、と思っています。小さい人間です)。
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