自由惑星同盟内でクブルスリー統合作戦本部長暗殺未遂事件が発生したこととほぼ時を同じくして、同盟領の4つの惑星系(ネプティス、カッファー、パルメレンド、シャンプール)で同時に反乱が発生しました。※銀河帝国のローエングラム侯ラインハルトの計略によるものです。
これらの4つの反乱に対して、新たに統合作戦本部長の座についてドーソン大将は、年下で同じ大将位にあるヤン・ウェンリーをこき使うため、イゼルローン駐留軍の1艦隊のみで対応するよう命じます。
さすがに1艦隊で全て制圧させるような命令が来ると想定していなかったヤンは、4つの反乱をいかに効率よく各個撃破するか、について、その場に居合わせたユリアン(ヤンの養子。戦争孤児)、キャゼルヌと話合いますが、最終的に「同じ同盟軍なので、そこまでのことはしたくない。なるべく戦わずに済む方法を考えて、できれば相手の降伏にもっていけるようにしたい」と結論付けます。その結論に対するユリアンの反応が、「兵士は楽でしょうけど、司令官は苦労ですね」でした。
ユリアンの感想に対するヤンの言葉は、当時の同盟軍だけでなく、現代で頑張っているビジネスマンにとっても、最大限の皮肉がこもった言葉になりました。曰く、「その通り。けれども、世間では、兵士にも苦労をかける司令官の方が、自分も苦労していると思うものなのさ」。
ここでの学びは、表に見えるものだけでは、リーダーの能力を評価しないこと、です。ここはとても良く間違えられるところなので、丁寧に説明したいと思います。
何事も一番良い状況なのは、「トラブルが起きないように事前に手を打ち、起きた際も最小限の対応で済むよう事前に策を講じておく」ことであり、それができるリーダー(リーダータイプAと仮に設定します)が本来は望ましいリーダーであるはずです。
他方で、トラブルが起きた際に周りを巻き込みながら最大限努力をして鎮めるタイプのリーダー(リーダータイプBとします)は、対応力は評価できるものの、リーダータイプAのリーダーよりも、組織としては一段落ちる評価をするのが妥当でしょう。そして、何も事前の手を打てず、トラブル時に対処もできないリーダー(リーダータイプCとします)が、一番評価が低くなるのは、異論の余地がないと思います。
問題は、トラブルがない状態の場合が続いたとして、それが「事前に手を打って保たれた平和」なのか、「ただ何も起きないだけの平和」なのかが区別がつかない、という点です。
状況をまとめると、平時(トラブルがない期間)は、
リーダータイプA:事前に対処して平和を作っている
リーダータイプB:何もしていない、しかし、見た目の結果はAと一緒
リーダータイプC:何もしていない、しかし、見た目の結果はAと一緒
ということになるため、本来はタイプAが最も評価されるべきですが、見た目には違いが分からないため、評価に差をつけるのは表面上は困難です。
有事(トラブル発生時)については、
リーダータイプA:最小限の対応で沈めている
リーダータイプB:最大限の努力で対応、Aより頑張っているように見える
リーダータイプC:対応できない
従って、そのようなリーダータイプAのリーダーを組織にとどめておくためには、表面的な事象だけでなく、「なぜこの平和が保たれているのか」について、より深く洞察する必要があるのだと思います。
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