自由惑星同盟史上最大の銀河帝国侵攻作戦(最後の最終決戦の場の名を借りて、アムリッツァ星域会戦と呼ばれる)は、同盟軍の惨敗に終わりました。約3000万人を動員して2000万人が戦死し、8人の艦隊司令官のうち5人が戦死か捕虜となりました。一方の帝国軍は、戦死者は200万人、艦隊司令官の犠牲はゼロです。
戦争を可決した最高評議会議員は、反対した3名(トリューニヒト、レベロ、ホワン・ルイ)以外は辞職。軍部も、統合作戦本部長シドニー・シトレ元帥、最高司令官ラザール・ロボス元帥ともに引退となり、評議会に作戦案を持ち込んだフォーク准将は病院療養となっています。
そんな中、作戦の後方補給担当だったアレックス・キャゼルヌ(ヤンの士官学校の先輩)も、補給失敗の責任から、地方の補給基地の司令官職に左遷されることになりました。もっとも、補給の失敗といっても、帝国軍のラインハルトが仕掛けた焦土作戦によるものであり、彼自身の落ち度ではありません。
そう分かっていながらも、「誰も責任を追及されない社会よりまともってもんだ」と言えるキャゼルヌは、良識のある大人であり、同盟軍の宝であり、そしてヤンや後輩アッテンボローにとって道標となる先輩なのだと思います。
さて、ここでキャゼルヌが言及している「誰も責任を追及されない社会」ですが、恐らく銀河帝国の貴族社会のことを指しているのだと思います。貴族社会では、貴族は何をやっても責任を取らず、逆に平民は何もしなくても責任を取らされました。自由惑星同盟は、今のところそういう社会ではなく、平等に責任が追及される社会でした。
しかしながら、このアムリッツァ星域会戦の惨敗は、同盟の社会構造に亀裂を生じさせます。トリューニヒト閥の政治家達が貴族のようにふるまう時代の呼び水となったからです。他方で銀河帝国の方は、ラインハルトによって貴族社会が崩壊し、平等に責任が追及される社会に改革されていきました。
ここでの学びは、誰かが不当に守られる社会・組織に属するな、という点です。これは何も国家単位の大きな話だけではなく、学校やビジネスの世界にも言えることだと思います。どこの世界でも、責任を取らない誰かが、組織構造上放置(あるいは優遇)されている場合があります。これはその本人の資質の問題もありますが、組織構造そのものに致命的な欠陥があるということだと思います。そして、その組織構造上の欠陥は、長い時間をかけて醸成されたものが多く、個人の力ではたいていどうしようもないことが多いです。
責任が平等でない社会・組織は、守られる側にとっても、そうでない側にとっても不幸な社会・組織です。守られる側は、それが当たり前になり、その社会・組織以外で生きていく術を失っていきます。居心地が良いだけに、自分の力でそこから抜け出すことは困難です。逆にそうでない側にとっては、身に覚えのない責任を追及されることになります。
そんな社会・組織に属していると感じたら、あるいはそのような社会・組織になりつつある場合は、一刻も早くそこから抜け出す算段をすべきだと思います。
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