2021年2月11日木曜日

ヤン・ウェンリー「こんなやつがいるから、戦争が絶えないんだ」(本伝第7話)

普段温和なヤンが、シリーズ通して数少ない「本気の怒り」を示した場面です。

イゼルローン要塞をシェーンコップらローゼンリッターが占拠したのち、陽動作戦に引っかかっていたゼークト提督率いる帝国軍駐留艦隊は、「生きておめおめ帰れない」という理由で、要塞に突入して自爆玉砕しようとしていました。ヤンから「降伏せよ。降伏が嫌なら、追撃はしないから逃げよ」とまで譲歩されておきながら、生き残る選択肢を自ら捨てようとしていました。

ヤン・ウェンリー「こんなやつがいるから、戦争が絶えないんだ」(本伝第7話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第7話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっ ふ・サントリーより引用

自分の美学を持つこと自体は、否定されるべきことではないと思います。人それぞれ、大事にしているものは異なると思いますし、それは尊重されるべきです。しかしながら、ゼークト提督の問題は、美学を他人に強要していることです。残念ながら、ゼークトの乗船している旗艦は、イゼルローン要塞からのピンポイント攻撃により一瞬で消滅しますが、ほかの乗船員たちは本当は誰も死にたくなかったと思います。(旗艦消滅後はみな一目散に逃げだしています)。

自身の保身のために国民を利用する自由惑星同盟のトリューニヒトも酷い人間ですが、美学のために人を死地に巻き込み、その罪深さを微塵も認識しないゼークトも、同じように酷い人間だと思います。もっとも、ゼークトのそれは銀河帝国の軍人社会が生み出したものであって、本人の問題とは言い切れないところではあります。

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