もちろん、ルビンスキーはカストロプの現状に同情して手を貸したのではありません。冒頭の「帝国はアスターテで勝ちすぎた」との言葉にあるように、彼らフェザーンの方針は、銀河帝国と自由惑星同盟の共倒れです。
もともとアスターテ会戦は、同盟軍が勝つはずでした。2倍の艦隊を動員していましたし、それも実はフェザーンの情報リークの賜物でした。ところが、ラインハルトという予想外の要因により、銀河帝国が思わぬ大勝をしてしまった。その調整として、カストロプによる内乱がルビンスキーにより仕組まれたのでした。
また、フェザーンの凄いところは、カストロプに「勝てる」と信じ込ませたことだと思います。自由惑星同盟の首都星ハイネセンを守る防空システム「首飾り」をカストロプに(もちろん有償で)提供することで、彼の自信を増長させることに成功しました。※もっとも、「首飾り」はここに至るまで、ハイネセンで一度も作動したことがないので、無敵である保証は実は全くなかったのですが。
ここでの学びは、「プレイヤーではなくゲームメイカーになるべき」、ということだと思います。プレイヤーとしてのカストロプ、および鎮圧側のキルヒアイスは、フェザーンの掌の上で転がされていたに過ぎません。キルヒアイスと彼を派遣したラインハルトにとっては、昇進という果実を手に入れることができたため、プレイヤーとして最大の成果を上げたといって良いと思います。しかし、カストロプの立場になってしまっては悲惨です。利用された挙句、生き残ったとしても切り捨てられていたでしょう。
うまい話には裏がある、ということだと思います。「自分は誰かが作ったゲームの駒になってはいないか」、そういうことを時々自問することが、カストロプの二の舞にならない防衛策だと思います。
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