2021年11月9日火曜日

アドリアン・ルビンスキー「権力者自らが法を尊重しないのだがら、社会全体の規範が緩むばかりだ」(本伝第30話)

フェザーンの秘書官ルパート・ケッセルリンクの策謀により、自由惑星同盟政府は、現政権に批判的なイゼルローン要塞総司令官ヤン・ウェンリーを、「査問会」という非公式・非公開の場に召喚し、精神的な拷問にかけようとしていました。

ケッセルリンクは、ここまでの状況を自治領主ルビンスキーに報告します。ここで、ルビンスキーは未来の後継者たるケッセルリンク(お互いに明かしてはいませんが、実は血のつながった息子)に、自治領主および親として、同盟政府の行動に対する見解を「教訓を踏まえて」述べています。

「(正式な軍法会議ではなく査問会という選択は)現在の同盟の支配者たちにふさわしいやり方だな。口では民主主義を唱えながら、事実上法律や規則を無視し、空洞化させてゆく。姑息でしかも危険なやり方だ」。

そして、「権力者自らが法を尊重しないのだがら、社会全体の規範が緩むばかりだ」。

アドリアン・ルビンスキー「権力者自らが法を尊重しないのだがら、社会全体の規範が緩むばかりだ」(本伝第30話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第30話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリーより引用

ここで当時学んだのは、上位者こそ規範やルールを守る責任がある、という点でした。

自由惑星同盟の最高評議会は、百数十億人の自由惑星同盟の民衆のトップに立つ存在です。国家元首は評議会議長(トリューニヒト)ですし、軍権を握っているのは国防委員長(ヤンを召喚したネグロポンティ)です。この両名が、ヤンという一個人を糾弾するために、正式な手続きである軍法会議ではなく、査問会という法律上根拠のない手段を選びました。なぜなら、軍法会議の場合は証拠が必要であり、かつ被告側には弁護人を立てる必要があるためです。彼らは、民衆に対しては法と規範を尊重するよう訴えているにも関わらず、自らは法で公式に用意されている道を避けたのです。

国のトップが法を尊重しないのですから、民衆側の「法を尊重しよう」という意識が損なわれるのは自明の理です。この場合、たった2人の行動が、百数十億人の意識に影響するわけで、非常に罪深い行いであると言えます。これが、民衆側の2人の行動であったなら、それほど大きな影響はなかったと思います。※トップ2人が今回はクローズアップされていますが、軍の中にいるトリューニヒト派のメンバーや憂国騎士団の行動の酷いものだと思います。

日本でも、コロナ禍の最中に、飲食を伴う会合の自粛を求めていながら、国側がそれを軽視して会食をしていた例がいくつか明るみに出ました。日本の人口は1億人強ですので、自由惑星同盟のそれと程度は異なりますが、影響は同じだと思います。

もし自由に居住地を選べるのであれば(諸条件はいったん無視したとして)、政府要人の言動が一致しており、かつ彼らが規範や法律を尊重している場所を選ぶべきだと思います。あるいは、政府要人が規範を尊重していない場合に、ジャーナリズム等の民衆側がNoを突きつけることのできる社会を、選べるならば選びたいところです。なかなか見極めが難しいとは思うのですが。

また逆に、自らの行動が多数に影響する立場に自身が立ったとしたら、ちょっとした違反やズルであっても、思わぬ波及をすることを意識しておくべきだと思います。

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