補給を断たれ、餓えに苦しむ自由惑星同盟軍。一部艦隊(ビュコック中将の第5艦隊、ウランフ中将の第10艦隊、ヤン・ウェンリーの第13艦隊)は、作戦本部に撤退を打診するも、肝心の総司令官ロボス元帥が「昼寝中」のため、決裁を得られませんでした。
致し方なく彼らは自主的に撤退準備を始めますが、そこにラインハルト率いる帝国軍艦隊が急襲します(アムリッツァ星域会戦)。ヤン・ウェンリーの第13艦隊の星系には、元撃墜王ケンプ中将の艦隊が攻めてきました。
ヤンの艦隊は状況を察知していたため(また、幕僚たちが有能だったこともあり)、他の同盟軍艦隊よりもまだ食料に余裕がある状態だったと思われます。その甲斐があり、かつフィッシャー少将の名人芸も重なり、ケンプ艦隊に対して有利に戦いを進めることができました。
しかし、ヤン艦隊の真骨頂は、そこではありません。ヤン・ウェンリーは、ここでの戦いを、ケンプ艦隊を打ちのめすためにやっていたのではありませんでした。優位を築きケンプ艦隊が体制を整えるために後退した隙に、彼は全艦にこう命を下すのです。「全艦、逃げろ!」。彼は、逃げるために戦っていたのでした。
ここでの学びの一つは、プライドを捨てる、ということです。軍人にとって、逃げることは恥と思われがちですが、ヤン・ウェンリーと彼の艦隊にとっては一つの手段にすぎませんでした。変なプライドにとらわれることなく、その都度必要な手段を選択できることは、ビジネスの世界でも必要な素養だと思います。
また、もう一つの学びは、目的志向であること、です。ヤンは最初から逃げることを目的に戦いを組み立てていました。巧みな艦隊運動で消耗戦に持ち込み、敵が後退するタイミングで離脱を図る、そのために序盤に勝利を得る、という作戦だったと思われます。目の前の戦いで勝利してしまうと、ついその勝利に溺れて更に勝利を求めてしまいそうですが、彼はそれをしませんでした。(そういう無駄な戦いを、ヤンは絶対にしませんでした)。目的が明確でそこに至る道筋があると、無駄のない行動ができる、それは戦争だけでなく、ビジネスでも同様の学びだと思います。
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