自由惑星同盟軍は、前線の兵士と占拠した帝国領民衆への補給を目的として、膨大な物資を本国から前線に送ることを決定します。本国から前線まで、同盟軍の占領下にありました。そのため、補給船団はたいした護衛もつけず、本国から送り出されます。
この機会を心待ちにしていたのが、帝国軍の総司令官ラインハルトでした。彼は、今回の作戦を立てた時から、この機会が来ることを予想していたと思います。すなわち、補給船団を奇襲し、同盟軍の補給路を断つこと、そして物資の欠乏や士気の低下が限界に達した時点で全面攻勢をかけること、これが当初からの彼の戦略でした。
たかが補給船団の奇襲でしたが、彼は手を抜くことはしませんでした。むしろ、腹心のキルヒアイス提督に、彼がもつ全兵力(帝国軍で二番目に強大な艦隊)をもって討つよう命じます。「敵の生命線だ。お前に与えた兵力の全てをあげてこれを叩け」、と。
ここでの学びは、狙った機会に対して全力を尽くす、ということです。おそらく、この場面ではキルヒアイスでなくとも(例えばメックリンガーでも)、十分な成果を上げることができたと思われます。同盟軍(特に総司令官ロボス元帥と作戦参謀フォーク准将)は状況を甘く見て、ほとんど護衛をつけなかったからです。
しかし、ラインハルトは、念には念を押しました。なぜならば、ここで万が一失敗し、同盟軍が補給に成功してしまったら、むしろ逆に帝国軍が窮地に陥る可能性があったためです。特に、同盟領から持ち込まれる生産設備がもし帝国領の各惑星の土壌や環境とマッチし、民衆と同盟軍の関係が強固になってしまった場合、自由惑星同盟への民衆の信頼が拡大し、まだ占領下にない帝国領が離反する可能性がありました。
また、もし同盟軍側に少しでも周りを見渡せる人材がいれば、一個艦隊ぐらいの護衛をつける可能性も十分にあったと思います。そのため、ラインハルトは最も信頼するキルヒアイスにこの任を委ねたのです。
この学びは、ビジネスの世界でも当てはまります。たとえ状況的に、あるいは身体的に苦しい時期であっても、「力の入れ時」という機会が必ずあります。その時期に寝食を忘れて全力で臨めるか否かで、今後のキャリアの方向性は変わると思います。また、面白いもので、そういった「力の入れ時」は、一度経験すると次回以降なぜかその時期が感覚的に分かるようになる、そんな気がします。よって、できるだけ若い段階で、「力の入れ時」を経験しておくことをお薦めします。
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