物資を引き上げられた帝国領を次々と占領「してしまった」結果、自由惑星同盟軍は前線の物資が尽きてしまいます。各現場司令官は、自身の艦隊分+占領下の民衆分の物資補給を総司令官ロボス元帥に具申しますが、その量は当初の補給計画をはるかに超えるものでした。
結局、民衆分も含めた大規模な物資補給について、自由惑星同盟の最高評議会(内閣のようなもの。今回の開戦を決定したのもこの会議)で審議にかけられます。その場での議論は、補給を行うか否か、というよりも、戦いをやめて撤退するか、補給をして戦いを続けるか、この二者択一でした。
表題の発言は、撤退派のジョアン・レベロ財務委員長のものです。「民衆を道具にするとは憎むべき方法だが、わが軍が民衆の解放と救済を旗印にしている以上、有効な方法であることは認めざるを得ない」。もともとレベロは今回の戦争に反対でしたが、帝国軍司令官であるラインハルトの戦略をきっちり読み取り、撤退を主張したのでした。まだこの時期の自由惑星同盟は、人材が尽きていなかったということだと思います。しかしながら、最高評議会は戦いの継続を決定してしまいます。
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第14話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっ ふ・サントリーより引用
ここでの学びは、客観的に明らかに正しいことでも、感情論に負けてしまうことがある、ということだと思います。最高評議会のメンバーは、まともな理解力の持ち主であれば、レベロが言っている見通しが正しいことは分かっていたはずです。この時点でまだ勝てるという幻想を保持していたのは、総司令官のロボス元帥と作戦を立案した本人である参謀のフォーク准将くらいだったと思います。
しかし、最高評議会は「ここで戦いをやめたら恥」「次の選挙に負ける」という体面や感情論をもとに、撤退案を一蹴しました。同じような反応は、軍部側にも見られます。
つまり、我々はただ正しいことを主張するだけでは、愚行を止められないということなのだと思います。正しいことを主張しながらも、その正しさを認めた場合に傷つく可能性のあるメンバー(この場合は、最高評議会メンバー)に逃げ道を与えること、ここまでの配慮をしない限り、一度抜かれた剣は鞘に収まらないのだと思います。面倒な話ではありますが。
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