ヤンがケンプ艦隊からの逃亡に成功した頃、帝国軍艦隊で最も好戦的なビッテンフェルト提督と遭遇していたのが、ウランフ提督の第10艦隊でした。ウランフもヤンと同様、補給路を断たれたことによる同盟軍の不利に気づいていましたので、撤退準備もしていたし、食料はセーブ気味に消費していたはずです。しかしながら、こちらは同盟軍よりも帝国軍の方が数で上回るという状況でした。そのため、戦況は五分五分だったものの、徐々にウランフ艦隊の方が押され始めます。
ここで、第10艦隊参謀長のチェンが冷静な判断のもと、二つの選択肢をウランフに提示します。すなわち、降伏か、逃亡か、です。ウランフは「降伏は性に合わん。逃げるとしよう」ということで、ヤンと同様に逃亡を選択しますが、既にビッテンフェルトに全包囲されていましたので、彼らには紡錘陣形による中央突破しか手段がありませんでした。
ウランフは自身の旗艦がしんがりを務める判断を下します。「傷ついた味方艦を一隻でも多く逃がすんだ」。彼の勇戦の結果、全体の5割は逃亡に成功、後にヤンの第13艦隊と合流し、自由惑星同盟最後の希望になるのですが、残念ながらウランフ自体はここで戦死してしまいました。
ここでの学びの一つは、責任を全うする上官には良い部下がつく、ということだと思います。第10艦隊は非常に優秀な艦隊で、この戦いでも不利な状況にも関わらず善戦しますし、彼らのひとつ前の戦い(第3次ティアマト会戦)でも、ラインハルトをして「同盟軍にもできる奴がいる」と言わせる戦いぶりでした。それらはおそらく、艦隊司令官ウランフの人柄と責任感(この人は部下を見捨てないという信頼)によるところが大きいと思います。これはチームを率いる仕事全てに言えることではないでしょうか。
もう一つの学びは、逆に、司令官は本来格好悪くても生き残らないといけない、ということです。ここでウランフが戦死したことは、同盟軍にとって痛手でした。なぜなら、この戦い(アムリッツァ星域会戦)で、当時の11人の艦隊司令官のうち、なんと6人も失うことになるからです。生き残った司令官職のメンバーで、実戦でラインハルトの精鋭とまともに戦えるのは、ヤン、ビュコックの2人くらいになってしまいました(残り3人は、クブルスリー、パエッタ、ルグランジュ)。そのため、ここで名誉の戦死をするのではなく、ギリギリのところでシャトルに乗って逃げ出していてほしかった、と個人的には考えてしまいます。
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