2021年2月8日月曜日

アドリアン・ルビンスキー「帝国はアスターテで勝ちすぎた」(本伝第5話)

マクシミリアン・フォン・カストロプが反乱を起こしたのは、第三勢力フェザーンにそそのかされたからでした。フェザーンの黒狐ことアドリアン・ルビンスキー自治領主は、カストロプが銀河帝国に対して良からぬ感情を持っていることを知っており、その感情を利用したのでした。(マクシミリアンは、父が違法に蓄積した私財の返還を、帝国から求められていました)。

もちろん、ルビンスキーはカストロプの現状に同情して手を貸したのではありません。冒頭の「帝国はアスターテで勝ちすぎた」との言葉にあるように、彼らフェザーンの方針は、銀河帝国と自由惑星同盟の共倒れです。

アドリアン・ルビンスキー「帝国はアスターテで勝ちすぎた」(本伝第5話)
『銀河英雄伝説』DVD 本伝第5話 (C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっ ふ・サントリーより引用

もともとアスターテ会戦は、同盟軍が勝つはずでした。2倍の艦隊を動員していましたし、それも実はフェザーンの情報リークの賜物でした。ところが、ラインハルトという予想外の要因により、銀河帝国が思わぬ大勝をしてしまった。その調整として、カストロプによる内乱がルビンスキーにより仕組まれたのでした。

また、フェザーンの凄いところは、カストロプに「勝てる」と信じ込ませたことだと思います。自由惑星同盟の首都星ハイネセンを守る防空システム「首飾り」をカストロプに(もちろん有償で)提供することで、彼の自信を増長させることに成功しました。※もっとも、「首飾り」はここに至るまで、ハイネセンで一度も作動したことがないので、無敵である保証は実は全くなかったのですが。

ここでの学びは、「プレイヤーではなくゲームメイカーになるべき」、ということだと思います。プレイヤーとしてのカストロプ、および鎮圧側のキルヒアイスは、フェザーンの掌の上で転がされていたに過ぎません。キルヒアイスと彼を派遣したラインハルトにとっては、昇進という果実を手に入れることができたため、プレイヤーとして最大の成果を上げたといって良いと思います。しかし、カストロプの立場になってしまっては悲惨です。利用された挙句、生き残ったとしても切り捨てられていたでしょう。

うまい話には裏がある、ということだと思います。「自分は誰かが作ったゲームの駒になってはいないか」、そういうことを時々自問することが、カストロプの二の舞にならない防衛策だと思います。

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